コラム
ITコンサルタントの種類とは?職種別の仕事内容・スキル・キャリアを徹底解説
ITコンサルタントには様々な種類がおり、それぞれ専門とする領域や仕事内容が異なります。 例えば、企業の経営戦略に沿ってIT戦略を策定するコンサルタントもいれば、基幹システム導入を支援するコンサルタント、プロジェクト管理を専門とするコンサルタントなど多岐にわたります。こうした違いを正しく理解することは、自身のキャリア選択やフリーランスとしての方向性を見極める上で非常に有用です。なぜなら、自分に適した分野や必要なスキルを把握できれば、より専門性を発揮できる職種を選びやすくなるからです。また、ITコンサルタントは近年需要が非常に高まっており、経験を積めばフリーランスとして独立し高収入を得るチャンスも広がっています。
本稿では「ITコンサルタントの種類」に焦点を当て、各コンサルタント職種の役割や仕事内容、必要なスキル、そして将来性やフリーランス需要について詳しく解説します。
目次
| IT戦略コンサルタント
| 役割
IT戦略コンサルタントは、一言でいえば「企業の経営戦略に沿ったIT戦略の策定と実行を支援する専門家」です。単なるIT技術のアドバイザーに留まらず、クライアント企業の経営層(CIO:最高情報責任者やCDO:最高デジタル責任者)と協働し、ITの力でビジネス目標を達成するためのロードマップを描き、その実現まで伴走する役割を担います。
例えば、最新テクノロジー導入による業務改革やデータ基盤の整備構想、全社的なDX(デジタルトランスフォーメーション)推進策の提案・実行など、企業課題に対してITの観点から最適解を導くことがミッションです。
| 主な仕事内容
経営と技術の架け橋として、戦略立案から実行支援まで広範な業務を担当します。具体的には現状分析からIT戦略の立案、ITソリューションの提案、プロジェクトマネジメント、そして実行支援・定着化まで一連のプロセスをリードします。
まずクライアントの経営計画や事業課題、現行の業務プロセスを分析し、ITによる改善施策を検討します(現状分析と戦略立案)。続いて、描いた戦略に基づき必要なシステム基盤やアプリケーションを選定し、全体ロードマップを策定します(ITソリューションの提案)。戦略が承認されたら、プロジェクトを立ち上げて進行管理・リスク管理などPM業務も担い、予算・スケジュール内で戦略を実現できるよう統制します(プロジェクト管理)。さらに導入後は、現場への定着を図るため運用プロセスの改善やユーザー教育を行い、施策が効果を発揮するまで伴走します(実行支援)。
このように課題解決のためのコンサル提案と、計画の着地までマネジメントする役割を兼ね備えている点が特徴です。
| 必要なスキル・適性
高度な役割だけに要求されるスキルセットも幅広いです。まずIT全般に関する広範な技術知識が不可欠です。ネットワーク、クラウド、セキュリティ、データベースなどインフラから最新デジタル技術まで、急速に進化する技術動向をキャッチアップし適切な提案に繋げる力が求められます。同時にビジネス理解力も重要で、クライアントの業界動向やビジネスモデル、業務プロセスへの深い理解が必要です。経営戦略や会計・財務の知識を備え、IT施策を経営目標に結び付ける発想力が求められます。
さらにコンサルタントとして論理的思考力やコミュニケーション力、プレゼンテーション力も欠かせません。経営層への提案から現場調整まで行うため、相手に合わせた柔軟な対話力やリーダーシップが必要です。加えてプロジェクトを統括するプロジェクト管理能力、多様なステークホルダーの意見をまとめる調整力も重要でしょう。総じて、IT戦略コンサルタントには技術×経営の知見と高い総合力が求められると言えます。
| 将来性とフリーランス需要
IT戦略コンサルタントの将来性は非常に明るく、需要は年々高まっています。商品の開発やサービス提供に至るまでIT抜きでは語れない時代となり、企業にとって「IT戦略」の重要性が飛躍的に増しているためです。経営企画や従来の戦略コンサルとは別に、ITに特化した戦略立案のプロフェッショナルを求める声が強く、経験豊富な優秀人材は好待遇で迎えられる傾向にあります。
特にDX推進が国家レベルで叫ばれる中、大企業のみならず中堅企業でもIT戦略人材の確保が急務となっています。またフリーランスとしても需要が高い分野であり、豊富な実績を持つコンサルタントであれば独立後に高収入・自由な働き方を両立しやすい魅力的なキャリアです。実際に市場では、DX戦略策定やITグランドデザイン策定を担えるフリーのIT戦略コンサルタントに高単価案件のオファーが増えています。以上から、IT戦略コンサルタントは今後も専門性・報酬ともに非常に有望な職種だといえるでしょう。
| 業務改革コンサルタント(BPRコンサルタント)
| 役割
業務改革コンサルタント(BPRコンサルタント)は、企業の業務プロセス全体を分析して問題点を洗い出し、抜本的な改革案を提案・実行することで経営改善に貢献する専門家です。
BPRとはBusiness Process Re-engineering(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)の略で、既存の業務の流れや組織構造をゼロベースで見直し、生産性や効率を飛躍的に向上させる取り組みのことを指します。単なる部分的な「業務改善」にとどまらず、組織横断で業務フローそのものを再設計する大胆な変革がBPRの特徴です。
例えば、顧客満足度向上のために全社的なサービス提供フローを改革したり、生産性向上のために部署間の情報共有プロセスを抜本的に見直す――このように会社の仕組み自体を再構築することで業績向上を目指すのがBPRコンサルタントのミッションです。
| 主な仕事内容
現行業務プロセスの可視化・分析、あるべき業務プロセスの設計、業務改革の実行支援、改革後の効果検証といったステップでプロジェクトを進めます。
まずAs-Is(現状)の業務フローを詳細に分析し、各部門の手順や連携の実態を把握して非効率やムダな工程を洗い出します。次にTo-Be(理想)の業務プロセスを構想・設計します。目標達成のために不要な工程の削減、新たなワークフローの導入、ITシステム活用による自動化、組織体制の見直しなどを検討し、時間・コスト削減やサービス向上につながる改革案を策定します。策定した改善策については定量的・定性的な効果(削減できる時間・コストや顧客体験への影響)も見積もります。そして改革案の実行段階では、新しいプロセスへの移行を現場で支援します(業務フローの切り替え、システム導入支援、社員研修など)。実行後はパフォーマンス評価や継続的な改善を行い、改革が定着し目標通りの効果を発揮しているか検証・フォローします。
このようにBPRコンサルタントは、業務の現状把握から将来設計、変革の推進、そして成果確認まで一貫して関与するのが特徴です。
| 必要なスキル・適性
BPRコンサルタントにはビジネス全体を俯瞰する視野と分析力が求められます。具体的には、現状プロセスを論理的に分解し問題点を発見する論理的思考力、多部門に渡るヒアリングや合意形成を円滑に行うコミュニケーション能力・調整力、改革案を経営層に提案するプレゼンテーション力が重要です。また、プロセス改革にはITツール導入が伴うケースも多いためITに関する知識(業務システムやRPA等の理解)やデータ分析スキルも武器になります。
さらに、改革プロジェクトを推進するプロジェクト管理能力、改革後の定着を支援する地道さも必要です。適性としては、現状に疑問を持ち改善策を考えるのが好きな人や部門横断的な視点で課題解決に取り組める人が向いているでしょう。加えて、自社のしがらみなく客観視できる第三者として振る舞う場面も多いため、公平な視点・柔軟性も大切です。
| 将来性とフリーランス
業務改革/BPRコンサルタントへのニーズは近年ますます高まっています。多くの企業がデジタル化やグローバル競争、人手不足といった課題に直面し、抜本的な業務効率化による競争力強化を迫られているためです。特に日本では労働生産性の低さが指摘されており、これを底上げするために組織改革のプロであるBPRコンサルタントに注目が集まっています。今後もDX推進や働き方改革などの潮流の中で、プロセス改革の専門家としてのBPRコンサルタントの役割は重要性を増すでしょう。フリーランス市場でも、業務改善やDX実行支援のプロジェクトは多数存在し、大手企業が短期契約でBPRコンサルタントを求めるケースもあります。特に自社にノウハウがない企業が外部のBPR経験者に変革支援を依頼するニーズは根強く、実績豊富なコンサルタントであれば独立後も案件に困らない傾向です。以上のことから、業務改革コンサルタントは今後も需要が高く、組織変革のキーパーソンとして活躍の場が広がるでしょう。
| ERPコンサルタント
| 役割
ERPコンサルタントは、企業がERP(Enterprise Resource Planningの略で、企業資源計画システム)を導入する際に、選定・導入から運用定着までを支援する専門家です。ERPとは、人事・会計・生産・在庫管理など企業の主要な経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を一元管理する統合基幹システムを指し、それによって業務効率化と経営の見える化を図ることができます。ERPコンサルタントは、まさにこのERPシステム導入を通じてクライアント企業の業務効率化と課題解決を実現することが使命です。
企業の現状業務を分析した上で最適なERPパッケージを選定し、導入計画の立案、設定・カスタマイズ、テスト、本番稼働、定着化支援に至るまで一連のプロジェクトをリードします。特定の製品に限らず、SAPやOracle E-Business Suite、Microsoft Dynamicsなど様々なERPパッケージに通じたコンサルタントもいます。
| 主な仕事内容
ERP導入プロジェクトのコンサルティング全般を担います。具体的には、まず現行業務プロセスを調査・ヒアリングし、課題や要件を整理します。次に導入するERPシステム上でどのように業務を再構築するかの設計(Fit&Gap分析)を行い、システム設定方針を決定します。そしてERPパッケージの設定・カスタマイズでは、会計・販売・生産など各モジュールのパラメータ設定や追加開発の指示を出します。導入にあたってはプロジェクトマネジメントも重要な仕事で、関係部門との調整やベンダーコントロール、進捗・品質・コスト管理などを行います。システム構築後はユーザー受入テスト(UAT)の支援やユーザートレーニングを実施し、本番稼働へ移行させます。さらに導入後も、業務が円滑に回るよう運用定着のフォローや必要に応じた改善提案を行います。要するに、ERPという“大型システム”を企業に根付かせ成果を出すまでを包括的に支援するのがERPコンサルタントの仕事内容です。
| 必要なスキル・適性
ERPコンサルタントにはITと業務双方の深い知識が求められます。前提として、各種ERPパッケージ(例:SAP、Oracle、Dynamicsなど)の専門知識は不可欠です。
どのモジュールがどの業務機能を持つか、設定や開発の方法論など製品固有の知識が求められます。また、ERPは企業の主要業務を網羅するため、会計・物流・生産・販売・人事など幅広い業務領域の知識が必要です。業務プロセス全体を理解し、クライアントのビジネスを把握できることが重要になります。その上で、課題に応じて業務フローを再設計する力(業務分析力・改善提案力)が不可欠です。
さらに、大規模プロジェクトを推進するプロジェクト管理能力や関係者との折衝力も重要です。ERP導入は社内外の多数の利害関係者が絡むため、調整力・コミュニケーション力が成否を分けます。適性面では、論理的思考と緻密さを併せ持ち、複雑なシステムと業務の整合性を取れる人が向いているでしょう。エンジニア出身で技術に強い人や、業務部門出身で業務知識が豊富な人がコンサルタントに転向するケースも多く、双方のスキルセットを兼備していると強みになります。
| 将来性とフリーランス
ERPは企業経営の中枢を担うシステムであり、その導入ニーズは今後も安定して存在すると考えられます。特に日本では、レガシーシステムの刷新需要(いわゆる「2025年の崖」問題)もあり、老朽化した基幹システムを最新のERPに切り替える動きが活発です。そのため有能なERPコンサルタントの需要は引き続き高水準で推移するでしょう。実際、ERP導入プロジェクトはフリーランス案件としても豊富で、SAPやOracle経験者のような専門スキルを持つ人材は高単価で迎えられる傾向にあります。
将来的には、クラウドERPやモジュール間の連携、周辺システム(CRMやSCM等)との統合など、技術トレンドに対応できる人材が重宝されるでしょう。AIやRPAとERPを組み合わせた業務効率化ニーズも高まっており、ERPコンサルタントには新技術へのキャッチアップも求められます。総じて、ERPコンサルタントは長期的に見ても需要が底堅い職種であり、経験を積んだ後はフリーランスとして専門性を武器に活躍する道も十分に開かれています。
| SAPコンサルタント
| 役割
SAPコンサルタントは、ERPコンサルタントの中でもSAP社が開発したERPソフト「SAP」に特化したコンサルタントです。世界シェアNo.1を誇るSAPのERPパッケージ(製品名はSAP S/4HANAなど)を企業に導入する際、その計画策定から設定・開発、移行、本番稼働まで一貫して支援するのが主な仕事です。
SAPには会計・販売管理・生産管理・在庫管理・人事給与など企業活動に必要な機能が統合されています。そのためSAPコンサルタントは、クライアント企業の業務内容やニーズを詳細に把握した上で、SAPシステム上で最適な業務プロセスを実現することが求められます。
導入前の業務分析から要件定義、システム設計・設定、テスト、ユーザートレーニング、導入後の定着支援まで総合的に取り組み、SAPを使ってクライアントの経営課題を解決に導くのがSAPコンサルタントの役割です。なおSAPコンサルタントは単なる技術者ではなく、ビジネスとITの架け橋として経営改善をリードするプロフェッショナルである点が強調されています。
| 主な仕事内容
SAP導入プロジェクトの専門家として、ERPコンサルタントと類似したプロセスをよりSAP製品に特化して担います。具体的には、まずクライアント企業への徹底したヒアリングと業務分析を行い、現行業務の課題や改善要件を洗い出します。次に、SAPで実現する新業務プロセスを設計し、必要となるシステム要件を定義します。その後、SAPシステム上での設定・アドオン開発をサポートし、企業ごとに適した形でSAPをカスタマイズして導入を進めます。既存の基幹システムとSAPとの連携も考慮しながら、複数モジュール(FI財務会計、CO管理会計、SD販売管理、MM在庫管理等)にまたがる設定を調整します。プロジェクトの上流工程(要件定義・設計)から関与し、開発・テストフェーズも指揮、必要に応じてユーザー教育も実施します。大企業がクライアントとなるケースが多く、グローバル展開している企業では海外拠点への導入支援を行うこともあります。
要約すると、SAPコンサルタントはSAP ERPの専門知識と企業経営の知見を駆使して、SAP導入を全面サポートする仕事と言えます。
| 必要なスキル・適性
SAPコンサルタントにはまずSAP製品に関する深い知識が必要です。SAP独自のモジュール構造や設定方法、プログラミング言語(ABAP)に関する理解が求められます。また、担当領域(財務、人事、ロジスティクスなど)の業務知識も重要です。例えばSAP FIコンサルタントなら会計知識、SAP SDコンサルタントなら販売・物流の業務知識が求められるでしょう。加えて、企業の経営システム全般への理解も欠かせません。
各システムを統合するERPの導入では、既存システムとの接続やデータ移行の課題も出てくるため、ITインフラや周辺システムの知識も役立ちます。コミュニケーション面では、大規模組織の関係者と協働するため折衝力・調整力が必須です。クライアントの要望を正確に汲み取りつつ、標準機能での対応とアドオン開発のバランスを見極め、最適解を提案するコンサルティング能力も求められます。また、SAPは高額な投資となるケースが多いため、ROIを意識した提案力や経営層への説得力もあると望ましいでしょう。資格面では、SAP社が提供する「SAP認定コンサルタント資格」があります。SAP認定コンサル資格は領域別に多数あり、日本語で受験できるものだけでも50種類以上に及びます。
一つでも取得していればSAPコンサルタントとしての知見を証明でき、案件獲得や信頼性向上に役立ちます。未経験からSAPコンサルタントになるのは容易ではありませんが、SAPエンジニアやユーザー企業の基幹システム担当から転身する例もあります。適性としては、専門領域を極める探究心と大規模プロジェクトをやり遂げる粘り強さが挙げられます。
| 将来性とフリーランス
現在、SAPコンサルタントの市場価値は非常に高く、将来性も極めて明るい分野です。日本企業でもSAPを導入するケースは増え続けており、その波を受けて独立・起業を目指すSAPエンジニア/コンサルタントも増加しています。それでもなお、深刻な人材不足が懸念されており、特に「2025年問題」「2027年問題」と呼ばれる課題が目前です。
2025年問題とは老朽化した基幹系の刷新需要のピークを指し、2027年問題とはSAPの旧製品(SAP ERP ECC)の保守サポート終了に伴う大規模な移行需要を指します。このタイミングに向けて「SAPコンサルタントが圧倒的に足りなくなる」と危惧されており、実際SAP人材の慢性的な不足が長時間労働の一因になるほど案件が集中している状況です。そのため経験豊富なSAPコンサルタントは引く手あまたであり、「今が独立・起業に最適なタイミング」とも言われています。
フリーランス市場でもSAP案件は常に多数あり、高度な知見を持つ人材には非常に高単価なプロジェクトが用意されています。実際に大手企業のSAP導入PJでは外部コンサルタントを積極的に活用する例も多く、フリーのSAPコンサルタントとして長期契約で活躍する人も少なくありません。以上のように、SAPコンサルタントの需要は今後も拡大する一方であり、その専門スキルはキャリアの武器になります。経験を積んだSAPコンサルタントにとって、これから数年はビッグチャンスとも言えるでしょう。
| PMOコンサルタント
| 役割
PMOコンサルタントは、PMO(Project Management Office、プロジェクト・マネジメント・オフィス)体制を最適化することを専門とするコンサルタントです。PMOとは企業内でプロジェクト管理・統制を担う組織や仕組みのことで、PMOコンサルタントは主に大手企業やSIer、ITコンサルファームなどにおいて進行中のプロジェクトの管理・支援を行うPMやPMO担当者をサポートする役割を担います。
言い換えれば、プロジェクト全体の円滑な推進を裏方から支援する専門家です。IT戦略コンサルタントやERPコンサルタントのように特定の業務領域やシステムにフォーカスするのではなく、複数のプロジェクトに横串で関与し、プロジェクト遂行の仕組みづくり・改善に注力する点に特徴があります。PMOコンサルタントは各プロジェクトに入り込み、プロジェクト管理プロセスそのものを最適化することで、納期・予算・品質目標の達成を陰から支えます。
| 主な仕事内容
PMOコンサルタントの業務はプロジェクトマネジメントそのもののコンサルティングです。具体的には、プロジェクト計画の策定支援、進捗管理、課題管理、リスクマネジメント、品質管理、コスト管理など、多岐にわたります。各プロジェクトにおいて、プロジェクトマネージャー(PM)のバックアップ役を務めることが多く、会議体の運営や議事録作成、タスクの進行フォロー、関係者間の調整など細かなサポート業務を担います。
また、複数プロジェクトを統括するPMO組織の一員として、全体のプロジェクトポートフォリオを管理し、プロジェクト間のリソース調整やベストプラクティスの展開なども行います。さらに、プロジェクト管理手法の定着を図るため標準化ドキュメントの整備やプロジェクト管理ツールの導入支援、メンバーへのPM研修などを実施するケースもあります。要約すると、PMOコンサルタントは「プロジェクトが計画通り成功する仕組み」を作り・運営し・改善するのが主な仕事です。そのため、ときにはクライアント企業のPMO制度自体を設計・導入するといったコンサルティングも行われます。
| 必要なスキル・適性
PMOコンサルタントには何よりプロジェクトマネジメントの専門知識と実践力が求められます。プロジェクト計画立案から完了までの一連のプロセス(立上げ・計画・実行・監視コントロール・終結)に精通し、適切な管理技法を適用できることが基本です。具体的なスキルとして、WBSの作成、進捗・課題・リスクの見える化、品質管理手法(テスト計画策定など)、コスト見積もりと予実管理等の経験が重視されます。また、ドキュメンテーション能力や調整力も重要です。大量のプロジェクト資料を整理し分かりやすく共有したり、関係者の日程を調整して会議を設けたりといったきめ細かな対応力が求められます。ITプロジェクトに特化する場合はIT基盤の基礎知識(ネットワークやサーバー、クラウド等)も持っていると円滑です。
資格面ではPMP(Project Management Professional)やPMOスペシャリスト認定資格などがスキルの証明として有効で、取得しておくとコンサルタントとして信頼性が高まります。他にもIT領域に特化するなら基本情報技術者やネットワーク系資格(CCNAなど)があると知見の幅が広がるでしょう。
適性としては、縁の下の力持ちとしてサポートに徹することが好きな人、几帳面でタスク管理が得意な人、コミュニケーション力が高く調整役に回れる人が向いています。
| 将来性とフリーランス
PMOコンサルタントの需要もIT業界で着実に増えています。システム開発やDX推進など大規模なITプロジェクトが増える中、プロジェクト失敗のリスクを減らすために専門のPMO体制を敷く企業が増加しているためです。特に複数プロジェクトを同時並行で進める企業では、横断的に管理するPMOの重要性が認識されつつあります。PMOコンサルタントはそうした組織においてプロジェクト成功率を高めるキーパーソンと言え、今後も需要は堅調でしょう。また、フリーランスとしての活躍機会も多い職種です。大手企業ではプロジェクトごとに外部のPMO人材を契約し、専門知見を活用する例も一般的です。実際、ITフリーランス向けの案件を見ると「PMO支援」の募集が多数あり、PMやPMO経験者がフリーコンサルタントとして安定した収入を得ているケースもあります。PMOは特定業務知識よりも管理スキル重視のため、業界を問わずに経験を横展開しやすく、市場価値が落ちにくい強みもあります。総じて、PMOコンサルタントは今後も必要とされ続ける役割であり、組織内外を問わずプロジェクト成功に貢献できる人材として期待されています。
| SCMコンサルタント
| 役割
SCMコンサルタントは、SCM(Supply Chain Management、供給連鎖管理)領域の改善を通じて企業課題の解決やコスト削減に導くコンサルタントです。サプライチェーンとは、原材料の調達から製造、流通、販売に至る一連の供給プロセスを指します。SCMコンサルタントはその全体を俯瞰し、原材料から顧客に届くまでの流れを最適化することで業務効率化と利益率向上を図るのが使命です。多くの場合、単に現状分析・提案に留まらず、SCM管理システム(需給計画システムや在庫管理システム等)の導入提案・実装支援まで担うケースが主流です。
例えば、需要予測の精度向上や在庫削減を狙って最新のSCMソフトウェアを提案し、その導入プロジェクトをリードする、といった具合です。製造業や流通業におけるサプライチェーン上の課題解決のプロフェッショナルがSCMコンサルタントと言えるでしょう。
| 主な仕事内容
まずクライアント企業の物流・生産・在庫・調達プロセスの現状を分析し、リードタイムの長さや在庫過多、需給ミスマッチなどの問題点を洗い出します。次にそれらを解決するためのSCM改革プランの立案を行います。需要予測モデルの導入や在庫適正化、サプライヤーとの調達リードタイム短縮策、物流網の再設計など、サプライチェーン全体にまたがる施策を検討します。その際、具体的な解決策としてSCMシステムの提案・導入が伴うことが多いです。
例えば、販売予測と連動した生産計画システムを導入し需要変動に迅速に対応できる仕組みを作る、といった提案です。計画が承認されたら、選定したSCMシステム(需給計画ソフトや在庫管理ツール等)の導入プロジェクトを推進します。要件定義からベンダー調整、テスト、展開までプロジェクトマネジメントを行い、業務プロセスの移行を支援します。導入後は、新プロセスが定着するよう運用サポートや追加改善も行います。まとめると、SCMコンサルタントの仕事はサプライチェーン全体の課題を見極め、ITも活用しながら効率的な供給体制を実現することにあります。
| 必要なスキル・適性
SCMコンサルタントには物流・生産管理などサプライチェーン領域の専門知識と、そこにITを適用するスキルが求められます。まず前提として、メーカーや物流企業での実務経験、あるいはERPパッケージ(生産・在庫管理モジュール)の知見など、供給網に関する深い業務知識と実績が重宝されます。
需要予測の手法や在庫最適化の理論(例えば適正在庫日数や安全在庫計算)、生産計画の立案方法などの知識もあると良いでしょう。また、SCM分野ではデータ分析の重要性が高いため、データ解析力や数理モデルの知識(統計やオペレーションズリサーチの基礎)があると武器になります。
ITスキル面では、SCMソフトウェアやERPのSD(販売管理)・MM(在庫管理)モジュールなどのシステム知識が必須です。システムを使ってサプライチェーンの可視化や自動化を実現するため、それらツールの導入経験が求められることも多いです。資格面では、国際的なサプライチェーン資格であるAPICS認定資格(CPIMなど)や、日本ロジスティクスシステム協会のSCM検定などがスキル証明として挙げられます。
適性としては、緻密な分析が好きで現場改善にも粘り強く取り組める人、製造・物流の流れに興味があり数字に強い人が向いています。年齢層としては現場経験を積んだベテランが多く、フリーランスのSCMコンサルタントも豊富な業界知見を持つ高年齢層が目立ちます。
| 将来性とフリーランス
SCMの重要性はコロナ禍や国際情勢の変化により一段と増しています。グローバルなサプライチェーンの寸断や需要変動への対応力が企業競争力のカギとなり、SCM改革のニーズは今後も高まるでしょう。特に製造業や小売業では、在庫削減やジャストインタイムの実現など、コンサルタントへの期待が大きい領域です。フリーランス市場でも、SCMや物流領域の経験者は引く手あまたです。例えば「生産管理システム導入支援」や「需要予測モデル構築コンサル」といった案件が散見され、専門知識を持つ人材が高い日当で契約されています。もっともSCMコンサルタントは高度な業務知識がものを言う世界ですので、経験を積むまでに時間はかかります。しかし一度スキルを確立すれば、希少なサプライチェーンのプロとして長く活躍できるでしょう。物流のDX(デジタル物流)やサプライチェーンのデータ統合など新たなテーマも出てきており、そうした潮流に対応できるコンサルタントは将来さらに重宝されるはずです。
| CRMコンサルタント
| 役割
CRMコンサルタントは、企業のCRM(Customer Relationship Management、顧客関係管理)戦略の策定・実行を支援するコンサルタントです。顧客との関係構築を通じて顧客満足度を向上させ、ひいては売上・利益の最大化に貢献する重要な役割を担います。具体的には、顧客データの活用やマーケティング施策の最適化、営業・カスタマーサポートプロセスの改善など、「顧客視点での経営」を実現するためのコンサルティングを行います。CRMコンサルタントは経営戦略の理解を背景に、マーケティングや営業の現場知識、そしてCRMシステム(顧客管理システムやSFA:営業支援システムなど)に関するIT知識を駆使して、企業の顧客戦略を支援します。
例えば、見込み客の育成(リードナーチャリング)から既存顧客のロイヤルティ向上まで、顧客ライフサイクル全体を通じた施策を提案し、その実行をサポートするのがCRMコンサルタントのミッションです。
| 主な仕事内容
まず現状の顧客管理手法やマーケティング施策を分析し、課題を洗い出します。顧客データが部門ごとに分断されていないか、顧客セグメント別の適切なアプローチができているか、顧客満足度の測定とフィードバック体制は整っているか――こうした観点で現状診断を行います。次にCRM戦略の立案として、顧客維持率の向上やLTV(顧客生涯価値)の最大化など目標を設定し、それに向けた具体策を策定します。たとえば、「休眠顧客掘り起こしキャンペーンの企画」「ロイヤル顧客向けメルマガ配信」「コールセンターの応対品質改善」といったマーケ・営業・サービス各面での施策です。これらを実現するためにCRMシステムの導入・活用支援も重要な仕事になります。SalesforceやMicrosoft Dynamics 365といったCRMツールの導入コンサルティングや、既存システムの最適化提案を行います。導入後は営業・マーケ担当への教育を実施し、データに基づく顧客対応が現場に定着するようサポートします。さらに、施策の結果をKPI(例えば継続購入率や解約率)で計測・分析し、PDCAを回すところまで関与する場合もあります。要するに、CRMコンサルタントの仕事は「顧客志向経営」をデータと仕組みの面からコンサルティングすることにあります。
| 必要なスキル・適性
CRMコンサルタントにはマーケティング領域の知識とITリテラシーの両方が要求されます。マーケティングスキルとしては、STP分析や4Pといったマーケティングの基本理論、デジタルマーケティング(広告、メール、SNS活用など)の知見、カスタマージャーニーの設計力などがあると望ましいです。また営業プロセスにも通じている必要があり、SFA(営業支援)の知識や顧客サービスの業務理解も役立ちます。IT面では、主要なCRMツール(Salesforce、HubSpotなど)の操作知識やデータベース・BIツールの扱いに習熟していることが望まれます。SQLで顧客データを抽出・分析するスキルや、マーケティングオートメーションの設定経験があると強みになります。さらに分析力と提案力も重要です。膨大な顧客データからインサイト(洞察)を引き出し、それを基に経営層に響く戦略を描ける論理性・構想力が求められます。資格では、マーケティング系ではマーケティング検定やデジタルマーケティング関連資格、コンサルタント系では中小企業診断士が役立つ場合があります。またSalesforce認定コンサルタントなどCRMツールのベンダー資格を取得しておくと実務で武器になります。
適性としては、顧客志向が強く、人の心理や行動を分析するのが好きな人、データドリブンな考え方ができる人、そして部門横断で調整し動かすリーダーシップを発揮できる人が向いているでしょう。
| 将来性とフリーランス
現代は「顧客体験(CX)の時代」と言われ、CRMへの注力度は企業規模問わず高まっています。新規顧客獲得が難しくなる中、既存顧客のエンゲージメント強化による収益向上策は、多くの企業にとって最優先課題です。そのため、CRM戦略をリードできるコンサルタントの需要は今後も増加が見込まれます。特にDXにおいてマーケティングオートメーションやカスタマーサクセスが注目されており、データ活用型のCRMコンサルティングは一層重要になるでしょう。またフリーランスの観点でも、Salesforce導入コンサルタントやマーケティング分析コンサルといった案件は多数存在します。マーケティング会社や事業会社のプロジェクトで、短期間に専門知見を提供する働き方も可能です。CRMは成果が数値で示されやすく、実績を評価されやすい分野でもあります。優秀なCRMコンサルタントであればクライアント企業からリピート発注されることも多く、安定的に案件を獲得できるでしょう。総じて、CRMコンサルタントは今後も成長が期待されるフィールドであり、顧客データ活用のプロフェッショナルとして活躍の場が拡大していくと考えられます。
| その他の専門特化型ITコンサルタント
上記以外にも、ITコンサルタントには特定の技術領域に特化したタイプが存在します。ここでは例として、セキュリティコンサルタント、クラウドコンサルタント、データ分析コンサルタントの3種類を簡単に紹介します。
| セキュリティコンサルタント
サイバーセキュリティの専門家であり、企業の情報セキュリティ体制を診断・強化するのが仕事です。具体的には、システムやネットワークの脆弱性診断、セキュリティポリシー策定、対策ソリューションの提案・実装支援、従業員向けセキュリティ教育などを行います。例として、外部からのサイバー攻撃対策としてファイアウォールやウイルス対策ソフトの導入を提案したり、内部不正防止のためアクセス権限の見直しを助言することが挙げられます。
必要なスキルは情報セキュリティに関する高度な知識(ネットワーク・OS・暗号・認証など)や各種セキュリティ製品の知見、および最新の攻撃手法へのキャッチアップ力です。資格としては情報処理安全確保支援士(RISS)やCISSPなどが代表的です。近年はデジタル化の進展によりセキュリティ需要が急増しており、企業のデジタル資産を守るセキュリティコンサルタントは今後ますます必要不可欠な存在と言えるでしょう。
フリーランスでもセキュリティ評価やISMS導入支援の案件が多く、経験豊富な人材は重宝されています。
| クラウドコンサルタント
クラウドコンサルタントは、企業のクラウド活用を専門に支援するコンサルタントです。オンプレミス(自社設備)で運用しているシステムをクラウド環境へ移行したり、クラウドネイティブの新規サービス設計を手助けしたりするのが主な役割です。具体的には、現行システム群の評価を行い、最適なクラウド基盤の選定・移行計画の策定、クラウド上でのシステム設計・構築支援、運用ガイドラインの策定などを行います。
例えば老朽化した社内サーバー群をAWSやAzureに移行するプロジェクトで、移行戦略の策定から実行までリードするといったケースです。必要なスキルは主要クラウドプラットフォーム(AWS、Azure、GCPなど)の技術知識で、ネットワーク、サーバーレス、コンテナ、セキュリティ設定、コスト管理など幅広く理解していることが求められます。
同時にビジネス視点でクラウド導入のメリット(コスト削減やスケーラビリティ向上など)を語れることも重要です。クラウドコンサルタントはデジタルトランスフォーメーションの鍵を握るプロとして注目されており、企業競争力向上に大きく寄与します。
昨今はクラウド移行需要が非常に旺盛なため、フリーランス案件も多く、クラウドアーキテクト経験者がコンサルタントとして独立する例も増えています。
| データ分析コンサルタント
データ分析コンサルタント(データコンサルタントとも)は、企業が保有する膨大なデータを活用し、経営課題の解決や業務最適化を支援する専門職です。
単にデータを分析・可視化するだけでなく、その結果に基づいて具体的な改善策の提案まで行う点が特徴です。
仕事内容は多岐にわたり、ビジネス目標に沿ったKPI設計、必要データの収集基盤構築、データクレンジング、統計解析・機械学習モデルの構築、分析結果の報告と提言などを包括します。例えば、小売業クライアントに対して購買データを分析し顧客セグメントごとの購買傾向を可視化、その上でマーケティング施策の最適化を提案する、といった流れです。要求されるスキルはデータサイエンスの知識(統計学、機械学習、データベース等)とビジネス理解力の両面です。
使用する技術もPythonやRによる分析、BIツールによる可視化、クラウド上のデータ基盤構築(AWS/GCP/Azure)など多岐にわたります。加えて、分析結果を経営層に伝えてアクションにつなげるコンサルティング力も不可欠です。近年のDXブームで高度なデータ分析を行える人材の需要は急増しており、データ分析コンサルタントの活躍の場は拡大しています。フリーランスとしても、データ戦略立案やAI導入支援の案件などが多数あり、データサイエンスのスキルを武器に独立するケースも多く見られます。
| まとめ:ITコンサルタントも多様化が進む
以上、ITコンサルタントの主な種類について、その役割・仕事内容から必要スキル、将来性まで概観しました。ITコンサルタントと言っても「戦略」「業務改革」「基幹系(ERP/SAP)」「プロジェクト管理(PMO)」「領域別(SCM/CRM)」「技術特化(セキュリティ/クラウド/データ)」など細かな専門分野に分かれていることがお分かりいただけたかと思います。それぞれが扱うテーマや支援内容は異なりますが、共通して言えるのは「ITを通じてクライアント企業の価値向上に貢献する」という点です。ご自身の興味や強みがどの領域にマッチするかを考え、適切なキャリア選択をすることが重要でしょう。また、市場のニーズとしてはSAPやクラウド、データ分析など高度な専門領域のコンサルタントや、PMOなどプロジェクト成功を支えるコンサルタントにフリーランス案件でも高い需要があります。ITコンサルタントを目指す方・独立を考える方は、ぜひ本記事で紹介した各種類の特徴を参考に、自身のスキルアップ計画や今後のキャリアプランに役立ててください。
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