コラム
ネットワークエンジニアとは?仕事内容・必要なスキル、年収やフリーランスの働き方まで徹底解説
ネットワークエンジニアは、企業のIT基盤であるネットワーク環境を設計・構築・運用・保守するプロフェッショナルです。社内外のコンピュータや機器を接続して通信できるようにネットワークを整備し、ビジネスの情報通信を支える「縁の下の力持ち」といえます。現代の企業活動ではあらゆる業務がネットワークを介して行われるため、ネットワークエンジニアは社会になくてはならない存在です。近年は業務システムのクラウド化やリモートワークの普及に伴い、堅牢で柔軟なネットワーク環境への需要が一層高まっており、優秀なネットワークエンジニアへのニーズも増加しています。
しかし、ただ高性能なネットワーク機器を導入しただけでは安定した通信環境は実現しません。大規模ネットワークを滞りなく稼働させ、トラブルを未然に防ぐには、高度な専門知識と経験を持つネットワークエンジニアの存在が不可欠です。例えば社内ネットワークに障害が発生すれば業務が止まってしまいますが、ネットワークエンジニアが迅速に原因を特定し復旧することで事業への影響を最小限に食い止めます。また、多拠点の企業で安全なリモートアクセス環境を構築したり、サイバー攻撃からシステムを防御するためのファイアウォールやVPNを適切に設定したりするのもネットワークエンジニアの重要な役割です。このように、安定したITサービス提供の裏には常にネットワークエンジニアの支えがあります。
つまり、ネットワークエンジニアは企業の円滑なコミュニケーションとITサービスを陰で支える要となる存在です。経験豊富なネットワークエンジニアには高水準の年収が提示されることも多く、専門スキルを磨けば更なる収入アップも期待できます。最近では会社員として企業内で働くだけでなく、フリーランスのネットワークエンジニアとして独立し、柔軟な働き方や高収入を目指すケースも増えてきました。
本記事では、ネットワークエンジニアの具体的な仕事内容や求められるスキル、キャリアパスや将来性、正社員とフリーランスそれぞれの働き方の違いや年収レンジ、さらに案件獲得のコツや実際のプロジェクト事例まで幅広く解説します。現役のインフラ・ネットワーク系エンジニアの方や、これからネットワーク分野でフリーランスを目指す方の疑問や不安に答えていきますので、ぜひ参考にしてください。
目次
| ネットワークエンジニアとは?現場で求められる役割
「ネットワーク」とは、企業内外のコンピューターやサーバー、各種デバイス同士を接続する通信インフラ(回線や機器類)のことです。ネットワークエンジニアはこの通信インフラ全般を担当し、ネットワークの設計(要件定義・構成検討)から構築(機器の設定や配線作業)、そして運用・保守(監視やトラブル対応)まで一貫して手がけます。企業のオフィスLANやデータセンター間の回線、社内システムとクラウドサービスを繋ぐネットワークなど、ビジネスに必要なあらゆるネットワークを整備し、常に安定稼働するよう管理するのが役割です。
ネットワークエンジニアの守備範囲は所属組織によって様々です。専任のサーバーエンジニアやネットワークエンジニアが分業している大企業もあれば、1人でサーバーもネットワークも広く担当するケース(特に中小企業やスタートアップ)もあります。また、ソフトウェア開発者(アプリエンジニア)など他のIT職種と比べると、ネットワークエンジニアはハードウェア寄り(物理機器や通信プロトコル)の領域を扱う点が特徴です。自社内のITインフラ部門で働く場合もあれば、通信キャリアやSIer(システムインテグレータ)の技術者として顧客企業のネットワーク構築案件に携わるケースもあります。
このように、ネットワークエンジニアは企業ITの「血管」ともいえるネットワーク網を作り上げ、裏方としてビジネスを支える重要な役割を担っています。次に、ネットワークエンジニアの具体的な仕事内容を工程ごとに見ていきましょう。
| ネットワークエンジニアの仕事内容:ネットワーク設計から運用まで

ネットワークエンジニアの具体的な業務は多岐にわたりますが、大きく「設計・構築フェーズ」と「運用・保守フェーズ」に分けることができます。まず新規システムやオフィス拠点にネットワークを導入する際には、ビジネス要件に基づいて最適なネットワーク構成を設計します。必要な通信容量やセキュリティレベルを踏まえ、機器構成やネットワークトポロジーの設計(どのルーター・スイッチをどこに配置し、どのように配線するか)を行います。その後、設計に従ってネットワーク機器の構築・設定を実施し、実際に通信が正常に行えるかテストを経て本番稼働させます。
ネットワークのリリース後は運用・監視の段階に移ります。ネットワークが常に安定して稼働するように保守管理を行うのもネットワークエンジニアの重要な役割です。具体的には、ネットワークトラフィックの使用状況を監視して帯域に余裕があるかチェックしたり、ログを解析して異常な通信やエラーが発生していないかを確認します。機器の定期的なファームウェアアップデート適用や、障害発生時の原因切り分け・トラブルシューティングも日常的な業務です。また、ネットワーク利用者からの「ネットに繋がらない」といった問い合わせ対応や、必要に応じた設定変更・機器交換なども運用フェーズで発生します。
新人のネットワークエンジニアはまず運用・監視など下流工程の業務からキャリアをスタートし、経験を積む中で徐々に設計・構築といった上流工程を任されていくのが一般的です。例えば最初はデータセンターでネットワークの動作監視や簡単な障害対応から始め、経験を重ねるにつれてネットワーク増強計画や新拠点向けネットワーク設計など高度なタスクを担うようになります。最終的には、企業全体のネットワークアーキテクチャを設計できるネットワークアーキテクトや、大規模ネットワーク更改プロジェクトを統括するプロジェクトマネージャーへとキャリアアップする道も開けているでしょう。
| ネットワークエンジニアに必要なスキルは?求められる知識と資格
ネットワークエンジニアとして活躍するには、幅広い専門知識とスキルセットが求められます。代表的なものを挙げると以下の通りです。
| ネットワークの基礎知識
TCP/IPをはじめとする通信プロトコルの理解、ルーターやスイッチ等ネットワーク機器の設定スキルは必須です。特にCisco社製品に関する知識は業界標準となっており、Ciscoの認定資格であるCCNA/CCNPなどで学ぶことができます。
| サーバー・OSや関連技術の知識
ネットワークはサーバーやストレージ等と連動するため、LinuxやWindows Serverの基本操作、簡単なサーバー構築・管理の知識も役立ちます。また仮想化技術(VMwareやHyper-V)やコンテナ技術(DockerやKubernetes)の基礎知識があると、クラウド環境や最新インフラとの連携に対応しやすくなるでしょう。
| クラウド・セキュリティのスキル
近年はオンプレミスからクラウドへの移行が進んでおり、AWSやAzureといったクラウドサービス上でのネットワーク設計に関する知識は重宝されます。同時に、ネットワークセキュリティの知見(ファイアウォールの設定、VPN・暗号化技術、脆弱性対策など)も不可欠です。安全なネットワークを構築・運用するためにセキュリティ分野の知識を常にアップデートしておく必要があります。
| プログラミング・自動化スキル
業務効率化や大規模環境の管理には、スクリプト言語やプログラミングによるネットワーク自動化のスキルも求められます。例えばシェルスクリプトやPythonを用いてルーターの設定を自動化したり、Infrastructure as Codeのツール(AnsibleやTerraformなど)でネットワーク構成をコード管理するケースも増えています。
| コミュニケーション能力
技術スキルだけでなく、他チームとの調整やクライアントとの打ち合わせで必要となるコミュニケーション力も重要です。ネットワーク障害時には迅速に関係部署へ状況を説明・報告し、協力して問題解決に当たることになります。また、ネットワーク構成図や手順書を作成するドキュメンテーション能力も現場で重宝されます。
なお、ネットワークエンジニアは資格が必須の職種ではありませんが、資格取得によって自分のスキルを客観的に証明できるのも事実です。先述のCCNA/CCNPのほか、Linux技術者向けのLPIC、クラウド系ではAWS認定ソリューションアーキテクトなどが代表的でしょう。資格があれば必ず高待遇というわけではありませんが、習得過程で体系的に知識を身につけられるうえ、現場での信頼感にもつながるためキャリアアップの武器になります。
| フリーランスのネットワークエンジニアという選択肢:自由な働き方の可能性
ネットワークエンジニアは企業に正社員として属するだけでなく、フリーランス(個人事業主)としてプロジェクト単位で働く道も選べます。実際、ネットワークやインフラ分野でもフリーランスで活躍するエンジニアが増えており、自分の裁量で働き方を決められる自由なキャリアの選択肢として注目されています。ただし、ネットワーク領域のフリーランス案件にはいくつか特有の傾向があります。
| 常駐案件が比較的多い
フリーランス=在宅というイメージもありますが、ネットワーク構築・運用の案件ではクライアント企業先やデータセンターに常駐して作業する案件が多い傾向にあります。ネットワーク機器の設置や配線など物理的な作業が必要になる場面があるためです。ただし近年はクラウド環境の普及により、ネットワーク設定自体はリモートで対応可能なケースも増えてきました。その結果、「基本リモートで必要時のみ現地対応」といった柔軟な働き方ができる案件も登場しています。
| 運用・保守のみの案件も存在
ネットワーク更改プロジェクトの設計・構築フェーズだけでなく、既存ネットワークの運用監視や保守に特化した案件もあります。監視や障害対応など運用業務が中心の案件は、設計スキルをあまり問われないぶん比較的経験が浅くても参画しやすいのが特徴です。駆け出しのフリーランス期には、まずこうした運用フェーズ中心の案件から経験を積むのも一つの戦略でしょう。
| 長期案件が多い
フリーランス案件というと短期のスポット契約を想像するかもしれませんが、ネットワークエンジニアの場合、半年〜1年以上の長期プロジェクトになるケースも少なくありません。特に運用・保守系の仕事は継続対応が求められるため、一度参画すれば比較的長期間安定して稼働できるメリットがあります。その反面、長期案件にコミットしている間は新規の案件開拓が難しくなるというデメリットもあります。
| クラウド関連ニーズの増加
多くの企業がオンプレミスのネットワーク環境をクラウドへ移行したいと考えており、クラウド移行・クラウドネットワーク構築案件が年々増加しています。クラウドに対応できるネットワークエンジニアの需要は高まっており、オンプレミスとクラウドを繋ぐハイブリッドネットワークの設計スキルなどがあると参画できる案件の幅が広がるでしょう。
このように、フリーランスのネットワークエンジニアは個人の力で案件を請け負う分、働き方の自由度が高い一方で求められるスキル領域も幅広くなります。また、会社員のように上司や同僚が常にいるわけではないため、自己管理能力やビジネススキルも重要です。自ら営業をかけて案件を獲得しなければならず、納期管理や契約交渉まで自己責任となるため、技術力に加えてこれらのスキルが欠かせません。孤独感を感じる場面があるかもしれませんが、その分「携わる案件」「働く時間・場所」を自分で選択できる裁量があり、成果次第では高収入を得られる魅力があります。こうした理由から、十分な経験を積んだエンジニアがキャリアの選択肢としてフリーランスを検討するケースも増えています。案件獲得の際にはフリーランス向けエージェントやマッチングサービス(例えばIT人材特化の才コネクトなど)を活用すれば、営業の負担を減らして効率的に希望に合う案件を見つけられるでしょう。
| ネットワークエンジニアの年収は?企業勤務とフリーランスの比較

| 企業勤務の場合
ネットワークエンジニア(正社員)の平均年収は500万〜600万円程度とされ、日本の全職種平均(約430万円)やIT技術者平均(約450万円)より高めです。若手は400万円前後からのスタートが多いですが、経験を積めば700万〜800万円台まで収入が上がる人も珍しくありません。大手企業で管理職に就いたり、高度なネットワーク専門スキルを持つ人なら年収1,000万円を超えるケースもあります。
| フリーランスの場合
フリーランスのネットワークエンジニアは案件ごとの契約で報酬を得ます。月額50万〜80万円程度(年間換算600万〜960万円)が単価のボリュームゾーンで、中には月100万円超の高単価案件もあります。月80万円の案件に1年間参画できれば年収約960万円と会社員を上回りますが、常に案件が途切れない保証はなく、プロジェクト間の待機期間(ベンチ期間)には収入ゼロとなるリスクもあります。経費や社会保険料も自己負担のため手取りは目減りしますが、それでも実績と技術力次第でフリーでも年収1,000万円超を実現できるチャンスは十分あります。実際、高度なネットワークコンサルや大規模プロジェクトリードでは月単価100〜150万円といった高待遇の契約例もあります。
| フリーランスと正社員ではどう違う?メリット・デメリットの比較
フリーランスと正社員で働く場合のネットワークエンジニアの違いを、主な観点ごとに比較してみましょう。
| 収入・報酬
正社員は毎月決まった給与が保証され、賞与や各種手当も含めて安定した収入が得られます。一方フリーランスは案件単位の成果報酬となるため、高収入を狙える反面、不安定でもあります。実力次第でフリーランスの方が年収で上回ることも可能ですが、案件に恵まれなければ収入が大きく落ち込むリスクも抱えます。
| 働き方・裁量
正社員エンジニアは勤務時間や勤務地など基本的に会社の規則に従います。担当プロジェクトも会社から割り振られるため、自分で好きな案件だけを選ぶことはできません。一方フリーランスは、携わる案件や働く時間・場所を自分で選択できる自由があります。得意分野のプロジェクトに絞って仕事ができる点や、ライフスタイルに合わせて稼働量を調整できる点はフリーランスの大きなメリットです。ただし前述のようにネットワーク分野では常駐案件も多いため、すべてを思い通りにできるわけではありません。
| 福利厚生・社会的信用
正社員には社会保険への加入や有給休暇、各種手当など福利厚生が整っていますが、フリーランスには基本的にそれがありません。健康保険や年金は自ら国民健康保険・国民年金に加入し、税金も自分で確定申告して納める必要があります。また、住宅ローンなど金融面では企業勤務の方が社会的信用を得やすい傾向があります。フリーランスは自営業扱いとなるため、一定の信用を得るには継続的な実績や安定収入を示していくことが求められるでしょう。
| スキルアップ・キャリア
正社員エンジニアは社内研修やOJTで体系的に学べたり、先輩の指導を受けながら成長できる環境があります。企業内で昇進して管理職や専門職としてキャリアを積んでいく道も用意されています。フリーランスは常に自己研鑽が必要で、意識的に新しい技術を学び続けなければ市場価値が下がってしまいます。しかし裏を返せば、フリーランスは様々な現場を経験して多彩なスキルを身につけやすく、自分次第でキャリアの幅を広げられる利点もあります。
| ネットワークエンジニアの実務プロジェクト事例

| 社内ネットワークのセキュリティ強化
老朽化したファイアウォールによる脆弱性を解消すべく、ファイアウォールを刷新するとともにネットワークをセグメント分割。外部からの不正アクセスを遮断し、セキュリティレベルを向上させました。
| オンプレミスからクラウドへのネットワーク移行
長年使ってきたオンプレミスの基幹システムをクラウド環境上に再構築するプロジェクトで、ネットワークエンジニアがVPNでクラウドと拠点を接続し、段階的に切り替えてダウンタイムを最小限に抑え移行を完了させました。
| まとめ
フリーランス・正社員いずれの道を選ぶ場合でも、常にスキルを磨き最新の技術にキャッチアップし続ければ、市場に必要とされるネットワークエンジニアであり続けることができるでしょう。デジタル化が進む社会では、ネットワークエンジニアの重要性と活躍の場はますます高まっていくでしょう。