コラム
ITコンサルタントが携わるIT保守運用を徹底解説
運用保守は「システムは構築して終わりではない」ことを体現するITプロジェクトの重要フェーズであり、ITコンサルタントはその安定稼働と継続的改善に不可欠です。運用保守を軽視すると、社内システム停止で業務が中断し、サービス停止は売上損失や信用失墜を招き、セキュリティ侵害のリスクも高まります。このように、運用保守フェーズで適切な管理プロセスを導入し、リスクを低減してユーザー満足度を支えることで、クライアント企業の事業継続と価値向上に繋がります。
目次
| 運用保守の定義と重要性
「運用保守」とは、ITシステムやソフトウェアをリリース後も安定して稼働させ、継続的に改善していくことです。一般的には、運用とは日々のシステム監視や定期作業などシステムを常に正常に動かすための活動を指し、保守とは障害発生時の復旧対応や機能改善などシステムを長期的に安定維持/進化させるための活動を指します。言い換えれば、運用が「現状のシステムを最良の状態で維持する」取り組みであるのに対し、保守は「将来の問題を未然に防ぎシステムを改善する」取り組みです。両者は目的こそ異なりますが、一体となってシステムの安定稼働を支えます。
運用保守が重視されるのは、ビジネスへの影響度が大きいためです。技術の進歩や利用環境の変化に伴い、システムを常に最新状態に保たなければ性能低下や故障リスクが高まります。適切な保守を怠れば最悪の場合、業務停止に至る可能性もあります。また脆弱性対応などセキュリティ保守を怠ると、不正アクセスやデータ漏洩の危険も増大します。実際、運用保守を怠った場合には「業務の中断」「売上低下」「信頼損失」「セキュリティリスク増大」といった重大なリスクが発生しうることが指摘されています。したがって、運用保守は単なるコストではなくビジネスを下支えする重要な投資と位置付けられます。
| ITILにおける運用保守の主要プロセス
ITサービスマネジメントのベストプラクティスであるITILでは、運用保守に関わるプロセスが体系化されています。
例えば、以下のような主要プロセスがあります。
| インシデント管理
システム上の予期せぬ障害やサービス停止に迅速に対応し、通常運用へ復旧させるプロセス。
ユーザーへの影響を最小限に抑え、できるだけ早くサービスを再開することが目的です。
| 問題管理
インシデントの根本原因を特定・解決し、再発防止策を講じるプロセス。
一時的な応急対応に留まらず恒久的な改善策に焦点を当て、サービス品質と安定性を向上させます。
| 変更管理
ITサービスを構成する要素への変更を管理し、変更によるリスクを最小限にとどめるプロセスです。ハードウェアやソフトウェアのアップデート、構成アイテムの追加・削除など、あらゆる変更による影響を統制します。
| 構成管理
サービス運営に必要な構成要素(サーバー、ソフトウェア、設定情報、人員、手順など)を可視化して管理するプロセス。最新の構成情報を把握することで、変更や障害時にも的確な対応が可能になります。
こうしたプロセスを含め、運用保守全体を管理する仕組みを構築しておくことで障害発生時の対応力が向上し、サービス品質の維持・改善が期待できます。適切な運用保守プロセスの導入により、インシデント対応の迅速化やユーザー満足度向上などビジネスへの大きな貢献につながります。
| ITコンサルタントが担う運用保守業務
ITコンサルタントは運用保守フェーズで専門知識と客観的視点を活かし、次のような業務を担います。
| 運用体制の設計・整備
新システム導入時に本番稼働後を見据え、運用組織やプロセスをゼロから設計します。
例えば障害対応の担当割り当てや変更管理の手順など運用ルールの策定を行います。専門企業のコンサルティングでも企画段階から運用方式や手順書作成を支援するケースがあります。
| 業務プロセスの改善
既存の運用フローに無駄やボトルネックがあれば分析して効率化します。現場ヒアリングやデータ分析により問題点を洗い出し、ITILベースでプロセスを再構築します。
例えばインシデント対応フローを見直して対応時間を短縮したり、承認手続きを簡素化するなど、現場目線で継続的に改善提案を行います。
| ベンダーコントロール(外部委託先の管理)
複数の運用・保守ベンダーが関与する場合、クライアント企業の立場で外部ベンダーを統制・調整します。サービスレベル合意(SLA)に沿った対応を徹底するなど、複数ベンダー間の調整役を担います。システム開発プロジェクト同様にベンダーコントロールのスキルが求められます。
| サービスレベル/指標の設計
運用サービスの品質を測るためのSLAやKPIを定め、モニタリング体制を構築します。
例えば「障害一次対応◯分以内」「平均復旧時間◯時間以内」といった目標値を設定し、契約や運用手順に組み込みます。サービスレベルを数値化・可視化することで継続的な改善や顧客満足度向上につなげます。
以上のように、ITコンサルタントは運用保守に関わる幅広い業務を主導し、現場と経営をつなぐ架け橋となります。単なる運用代行ではなく、プロジェクトマネジメントや分析力を活かして組織全体の運用レベル向上に寄与する点が特徴です。
| 運用保守フェーズにおけるITコンサルタントの価値
ITコンサルタントが運用保守に関与することで、企業にもたらされるメリットは多岐にわたります。
まず経営視点での価値として、コンサルタントは運用現場の課題を経営戦略と結び付けて捉えます。単なる現場作業の効率化に留まらず、運用コストの最適化やリスク低減によって事業全体のROI(投資対効果)を高める提案を行います。ITコンサルタントはプロジェクトマネージャーと似た役割を果たしつつも、経営や戦略の観点からのマネジメントが求められる点で異なります。
次にユーザー体験・満足度の向上という観点では、システムの最終利用者が快適にシステムを使えるよう運用プロセスを整備します。インシデント管理や問題管理を導入し障害の早期発見・迅速対応が可能になれば、サービス停止による影響を最小限に抑えられます。さらに根本原因の恒久対策によって類似トラブルの再発を防ぎ、ユーザー満足度向上につながります。
そして何より、ITコンサルタントが運用保守フェーズに継続関与することでIT施策の真の成果を引き出すことができます。導入したシステムや改革した業務フローが真に価値をもたらすかどうかは、運用段階で初めて明らかになります。ITシステムの技術的サポート自体は外部に委託できても、ビジネス観点での継続的な改善はITコンサルタントに期待される部分です。以上のように、運用保守段階でITコンサルタントが提供する価値は、経営目標の達成支援からユーザー満足度の向上、サービス信頼性の確保、さらには新たなIT戦略立案への橋渡しまで、多方面に及びます。
| 運用保守におけるリスクと防止策
運用保守を軽視したり不十分な体制のまま放置した場合、企業は以下のようなリスクにさらされます。
| 業務の中断
社内システムが突然停止すると、社員の業務が止まり生産性が低下します。
| 売上・機会損失
Webサイトやオンラインサービスがダウンすれば顧客は利用できず、売上減少や機会損失につながります。
| 信頼損失
サービス停止や重大障害が長引けば、ユーザーや取引先からの信用を失いかねません。
| セキュリティ被害
保守を怠って古いソフトウェアを使い続けると、脆弱性を狙ったサイバー攻撃やデータ漏洩が発生しやすくなります。
こうしたリスクは、事前の対策によって大幅に低減できます。主な防止策は次のとおりです。
| 定期メンテナンスと監視の徹底
システム稼働状況を24時間監視し、異常の兆候を見逃さないようにします。計画的な保守作業やアップデート適用を怠らず、問題の兆しがあれば早期に対処してダウンタイムを防止します。
| プロセスの標準化とナレッジ共有
運用手順書や対応マニュアルを整備し、誰が対応しても一定水準の結果が出せるようにします。対応履歴やトラブル事例を蓄積・共有し、同じ問題の繰り返し発生を防ぎます。
| 定期レビューと継続的改善
定期的に運用状況を見直し、問題点に対する改善策を講じて運用品質を向上させます。
| 適切な人員配備と外部活用
運用負荷が特定の担当者に集中しないよう体制を見直し、人員を増強・育成します。場合によっては監視やヘルプデスク業務を専門業者に委託し、社内要員の負担を軽減するのも有効です。
| 自動化・AIOpsなど運用保守の最新トレンド
近年、IT運用の現場では自動化技術やAIの活用による新たなトレンドが注目されています。複雑化・大規模化するシステムを人手だけで管理するには限界があるため、ツールやAIで運用保守を効率化・高度化しようという動きです。
中でも注目されているのがAIOps(AIによるIT運用)です。機械学習や統計分析によって膨大なログやメトリクスをリアルタイム解析し、異常検知や障害予兆の発見、対応策の自動提示・実行まで行います。これにより、運用担当者の障害対応負荷を軽減し、人手では見落としがちな問題も早期に発見できます。
また、運用業務の自動化も加速しています。定型的なジョブ実行やバックアップ、サーバ再起動などはスクリプトやRPAで自動化し、人的ミス防止と対応スピード向上を図ります。
こうした技術の導入により、運用保守の効率化と高品質化(ヒューマンエラー防止・コスト削減など)が期待できます。ITコンサルタントは、これら先端技術の選定や導入計画立案においても企業をリードし、次世代の運用体制構築を支援していくでしょう。
| フリーで活躍するITコンサルタントが参画しやすい運用保守系プロジェクト
フリーランスで働くITコンサルタントが参画しやすい代表的な運用保守系プロジェクトの種類と特徴を紹介します。運用保守分野の案件は、課題解決や体制構築のために期間限定で専門知識を求めるケースが多く、フリーランスのコンサルタントが力を発揮しやすい領域です。
| 新規システム導入時の運用設計
大規模システムの本番稼働を見据え、運用体制を構築するプロジェクトです。開発フェーズと並行して進められ、本番直後の混乱を軽減し早期安定稼働を実現することが目的です。期間は導入前後の数ヶ月程度で、運用手順書の整備や要員への引き継ぎ訓練、ハイパーケア期間の支援までを実施します。ITIL知識や過去の運用設計経験が求められ、短期間で体制を立ち上げるための調整力が必要です。クライアントにとっては、初期運用を専門家に任せることで導入後のリスクを下げられる利点があります。
| 既存システム運用の改善コンサルティング
稼働中システムの運用について、現状の課題を分析しプロセス改善を提案・実行するプロジェクトです。現場ヒアリングやデータ分析で問題点を洗い出し、ITILをベースに運用フローを刷新します。期間は数ヶ月の現状分析・提案フェーズと、その後の改善策実行フェーズに分かれます。必要スキルはITサービス管理や業務プロセス設計の知見、および現場との調整力です。コンサルタントは現状のギャップを可視化し、あるべき運用プロセスを定着させるまで伴走します。クライアントの狙いは運用品質の底上げやコスト削減、属人化の解消であり、こうした改善を客観的にリードできるITコンサルタントへ期待が寄せられます。
| ITサービスデスク再構築・SLA策定
情報システム部門のサービスデスク(ヘルプデスク)機能を強化し、問い合わせ対応体制を再構築するプロジェクトです。インシデント管理ツールを導入してユーザーからの問い合わせを一元管理し、対応フローを標準化します。同時にSLAを定義して「◯時間以内に一次回答」「◯日以内に解決」などサポート水準を数値化し、KPIでモニタリングを開始します。期間は3~6ヶ月程度で、現状調査から設計、ツール導入までを実施します。ITILのサービスサポート知識やツール導入のPM経験が求められます。狙いはユーザー満足度の向上(問い合わせ対応の迅速化・見える化)と経営層へのサービス状況レポート強化であり、この分野に明るいコンサルタントへのニーズが高まっています。
| 運用アウトソーシング支援・ベンダー選定
運用・保守業務を外部委託する際に、適切なアウトソーシング戦略を策定・実行するプロジェクトです。現行業務の棚卸から委託先選定、契約条件策定、移行計画立案までトータルに支援します。期間はベンダー決定まで数ヶ月、その後の移管期間に数ヶ月といった流れです。必要スキルは運用業務に精通した知識、契約交渉力、ベンダーマネジメント力です。フリーランスのITコンサルタントであれば、中立的な立場でベンダー比較や交渉を代行できるため、クライアントにとって心強い存在となるでしょう。
クラウド移行後の運用最適化(オンプレとクラウド両環境での運用整備)やセキュリティ運用強化(SOC導入支援など)、ITSMツール展開支援など、企業ニーズに応じたいろいろな案件があります。いずれの場合も、運用保守の専門知見とプロジェクト推進力を兼ね備えたITコンサルタントであれば、高い付加価値を提供できるでしょう。
| まとめ
いかがだったでしょうか?
記事全体を通じて、運用保守はシステムの安定稼働と継続的な価値向上を両立させるための要であり、そのフェーズにおけるITコンサルタントの支援は非常に重要です。運用と保守の役割を正しく理解し、インシデント管理や変更管理など体系だったプロセスを導入することで、ビジネスへの悪影響を最小限に抑えつつ高品質なITサービスを提供し続けることが可能となります。ITコンサルタントは専門性を活かして運用保守フェーズの質を高め、経営視点と現場実務をつなぐ架け橋となるでしょう。
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