コラム
Azureとは?クラウド初心者向けMicrosoft Azure徹底解説!
Azureは今や現代のビジネスに欠かせないクラウドサービスです。 理由はシンプルで、オンプレミスのサーバー管理から解放され、必要なITリソースを必要なときに柔軟に活用できるからです。近年は企業システムのクラウド化が加速しており、主要なクラウドサービスであるAWS(Amazon Web Services)、GCP(Google Cloud Platform)、そしてMicrosoft Azure(以下Azure)が注目を集めています。例えば、トヨタ自動車やコカ・コーラ、BMW、Adobe、富士通など世界や日本の一流企業もAzureを利用しています。こうした実績が示すように、Azureは信頼性・柔軟性に優れたクラウド基盤として多くの企業を支えています。本稿では、クラウド初心者や情報システム担当者の疑問を解消すべく、Azureの概要・特徴・メリット・活用事例・導入方法などを体系的に解説します。Azureを理解し活用することで、自社のIT基盤を一歩先へ進めるヒントとしていただければ幸いです。
目次
| Azureとは?
Azure(Microsoft Azure)とは、マイクロソフト社が提供する大規模なクラウドコンピューティングプラットフォームです。 サーバーやストレージ、ネットワークなどのITインフラをインターネット経由でオンデマンド提供し、ユーザーは自社でハードウェアを持たずに必要なリソースを利用できます。Azureは2008年に発表され、2010年に「Windows Azure」という名称でサービス開始、2014年に現在の「Microsoft Azure」に改称されました。名前の由来である“Azure(アジュール)”は英語で「空色」を意味し、「クラウド(雲)」と掛け合わせた命名とされています。その名の通りAzureは「空のように広大な」クラウド基盤であり、世界中に分散したデータセンターを通じてサービスを提供します。場所を問わずインターネットさえあれば利用できるため、テレワークやグローバル展開にも適した柔軟性を備えています。
Azureが提供するサービス形態は主にIaaSとPaaSです。 IaaS(Infrastructure as a Service)は仮想マシンやストレージ等のインフラ環境そのものをクラウドで提供する形態、PaaS(Platform as a Service)はアプリケーション実行基盤や開発環境をクラウドで提供する形態です。AzureはこれらIaaSとPaaSのサービスを統合的に提供し、ユーザーは必要に応じて自由に組み合わせて利用できます。一方、MicrosoftはOffice 365やDynamics 365などのSaaS(Software as a Service)も展開していますが、Azure自体は主にIaaS/PaaS領域をカバーするクラウドサービスと位置付けられます。この包括的なプラットフォームにより、中小企業から大企業まで幅広いビジネスでAzureが導入・活用されています。
| クラウドサービス市場におけるAzureの位置づけ
AzureはAWS、GCPと並ぶ世界トップクラスのクラウドサービスで、市場シェアは常に上位に位置しています。 調査によれば、2023年末時点で世界のクラウドインフラ市場におけるシェアはAWSが約31%、Azureが約24%、GCPが約11%となっており、AzureはAWSに次ぐ第2位の地位を占めています。これら上位3社で世界シェアの6割以上を占める状況が続いており、クラウド市場拡大の中心的存在となっています。日本国内でも同様に、海外大手プロバイダーであるAWS・Azure・GCPが市場を牽引しており、その豊富なサービス群や高い信頼性、日本語サポートの充実などが普及の要因とされています。
Azureが市場で支持されている背景には、マイクロソフトならではの強みがあります。 例えば「Windows ServerやOffice 365との親和性が高い」「企業向けの充実したサービスとサポート体制がある」といった点です。実際、AzureはWindows系システムとの相性が良く、オンプレミスのWindowsサーバーやActive Directoryなどをクラウドに移行しやすい環境を提供します。またグローバル企業のIT基盤として培われた信頼性の高さもAzureの特徴で、世界中に分散配置されたデータセンターにより高可用性を実現し、企業データを安全に保管・運用できます。これらマイクロソフトのブランド力や技術力を背景に、Azureは特に大企業での採用が進んでおり、クラウド市場において非常に強い存在感を示しています。
| Azureでできること・主なサービス群
Azureは200以上の多種多様なクラウドサービスを擁し、企業ITのあらゆるニーズに応えることができます。 提供するサービス分野はインフラ系(IaaS)、アプリケーション開発基盤(PaaS)、データベースや分析、AI・機械学習、IoT、セキュリティ、運用管理など多岐にわたります。オンプレミスでは実現が難しかった高度なIT活用も、Azure上の各種サービスを組み合わせることで柔軟に構築可能です。以下にAzureの主なサービス群の一例を紹介します。
| コンピューティングサービス(仮想マシン・コンテナなど)
オンデマンドでサーバーを作成できるAzure Virtual Machines、Kubernetesによるコンテナ運用を提供するAzure Kubernetes Service (AKS)、イベント駆動でコード実行ができるサーバーレスのAzure Functionsなどがあります。これらにより、自社サーバーを用意せずとも必要な計算リソースを即座に利用できます。
| ストレージ・データベースサービス
大容量のオブジェクトストレージを提供するAzure Blob Storageやファイル共有のAzure Files、高性能な分散NoSQLデータベースのAzure Cosmos DB、フルマネージドのリレーショナルDBサービスAzure SQL Databaseなど、データ保管・管理のための多彩なサービスがあります。オンプレミスのようなストレージ機器管理から解放され、スケーラブルかつ安全にデータを扱えます。
| ネットワーキング & セキュリティ
仮想ネットワークを構築するAzure Virtual Networkやオンプレミス接続用のVPN Gateway、トラフィック分散のAzure Load Balancerなどネットワーク機能も網羅されています。加えて、Azure Active DirectoryによるID/アクセス管理、Azure Security Center(現Azure Defender)による脅威検出、Azure Information Protectionによる機密情報保護など、クラウド上で強固なセキュリティ対策を講じるサービスも充実しています。
| アプリケーション開発基盤
Webアプリを迅速にデプロイできるAzure App Service、DevOpsを支援するAzure DevOpsツール群、マイクロサービス構築用のAzure Service Fabricなど、開発者向けのプラットフォームも豊富です。これにより、Azure上でアプリケーションの開発からテスト、デプロイ、運用まで一貫して行うことができます。
| AI・機械学習サービス
MicrosoftのAI技術を活用できるAzure AI(Cognitive Services)では画像認識や自然言語処理など様々なAI機能をAPI経由で利用可能です。また機械学習モデル構築のAzure Machine Learning、ビッグデータ分析のAzure Synapse Analytics、さらに昨今注目のAzure OpenAI ServiceではOpenAIの先進AIモデル(GPT-4等)を企業向けに安全に活用できます。これらを活用すれば、AIを使ったデータ分析や自動化ソリューションも自社で構築できるようになります。
| IoT・その他
IoT分野ではデバイスとの連携基盤であるAzure IoT Hubやエッジコンピューティングを支えるAzure IoT Edgeがあり、工場設備やセンサーからのデータ収集・制御がクラウド経由で可能です。この他にも、仮想デスクトップ環境を提供するAzure Virtual Desktop(リモートワーク用途)、オンプレミス環境と統合できるAzure ArcやAzure Stack(ハイブリッドクラウド用途)など、枚挙にいとまがないほど多彩なサービス群がAzure上には揃っています。
以上のように、Azureは単なるクラウドサーバーに留まらず、企業IT全般をカバーする包括的なプラットフォームです。例えばサーバーやネットワーク等の基盤構築だけでなく、AIを使った高度分析やIoTによるリアルタイムデータ活用まで、一つのクラウド上で実現できます。ユーザーは自社のニーズに合ったサービスを選んで組み合わせることで、オンプレミスでは得られないスピードとスケーラビリティでシステムを構築・運用できるのです。
| Azureを導入するメリットとデメリット
Azureを導入・活用することで得られるメリットは多数ありますが、一方で注意すべきデメリットも存在します。ここでは主なメリットとデメリットを整理します。
| Azure導入のメリット
| 大幅なコスト削減と初期投資不要
Azureは必要な分だけリソースを利用し料金を支払う従量課金制であり、サーバー購入費やデータセンター設備投資が不要です。オンプレミスのように初期に多額の投資をせずに済み、またリソースの無駄遣いを抑えて運用できます。例えば、使い方によっては開発コストを4分の1に削減できた事例もあるほどです。
| 柔軟な拡張性とサービスの豊富さ
Azure上ではサーバーやストレージの増減がクリック操作で即座に行え、アクセス増減に応じてシステム規模を柔軟に調整可能です。季節変動やビジネス拡大にも迅速に対応でき、必要なときに必要なだけリソースをスケールできる拡張性は大きな利点です。また前述の通りサービスが非常に豊富なため、将来的に新たな機能が必要になってもAzure内で追加できる可能性が高く、一つのプラットフォーム上で完結しやすい点もメリットです。
| ハードウェア管理からの解放
サーバーやネットワーク機器の購入・設置・保守といった手間が不要になり、すべての機能がクラウド上で提供されます。自社で設備を持たないことで、物理障害や老朽化対応に悩まされることもありません。IT担当者はインフラ保守よりも、アプリケーション開発やビジネス価値の創出に集中できるようになります。
| 高いセキュリティと信頼性
Azureはマイクロソフトが世界規模で運営するエンタープライズ向けクラウドとして、多層的なセキュリティ対策と国際的な認証に準拠した安全性を備えています。例えば、データ暗号化やアクセス制御、脅威検出システムなどが標準提供され、企業の重要データを保護します。また複数地域にまたがる冗長構成により、災害や障害発生時にも別地域のデータセンターでサービスを継続できる災害復旧(DR)体制が整っています。ビジネス継続計画(BCP)上もAzureの採用は有効と言えます。
| Microsoft製品との高い親和性
AzureはWindows ServerやSQL Server、Office 365、Dynamics 365などマイクロソフト製品との連携がスムーズです。既にオンプレミスでWindowsやActive Directoryを使っている企業であれば、Azure上でこれらを活用するハードルが低く、システム移行も比較的容易です。移行後も操作感が似ているため、ユーザーが違和感なくクラウド環境に移行できる利点があります。
| ハイブリッドクラウド対応
Azureはオンプレミス環境との連携を前提としたサービスが充実しており、社内データセンターとAzureを組み合わせたハイブリッドクラウドを構築しやすいです。例えば、一部システムだけAzureへ移行し他は社内に残すといった段階的移行や、オンプレミスのデータをAzureにバックアップするといった使い分けも可能です。他クラウドではフルクラウド前提のサービスが多い中、Azure独自のハイブリッド機能(Azure ArcやStackなど)はオンプレミス資産を活かしながらクラウド活用したい企業に大きな安心材料です。
| 国内リージョン対応と円建て課金
Azureは日本国内にも東日本(東京)・西日本(大阪)のデータセンターリージョンを持ち、国内企業のデータを国内に留めて運用できます。契約上の準拠法も日本法が適用されるため、万一トラブル時にも国内法の保護下で対処可能です。また利用料金を日本円で支払えるため、為替変動や外貨払いの手間を気にせず導入できる点も日本企業にとってメリットです。
| Azure導入のデメリット
| ランニングコストが発生する
クラウドサービスである以上、利用した分の料金が月々発生します。オンプレミスでは一度サーバー等を購入すればその後しばらく設備費は固定ですが、Azureでは使い続ける限り費用がかかり続けるため、長期的なコスト管理が必要です。とはいえ、使っていないリソースは停止・削除することでコスト削減できる柔軟性もあるため、適切な管理を行えば無駄遣いを防ぐことは可能です。
| 専門知識・スキルが必要
Azureを本格的に活用するにはクラウド特有の知識やスキルが求められます。例えばネットワークの仮想化やセキュリティ設定、インフラ自動化(Infrastructure as Code)など、オンプレミス運用とは異なる概念も多く習得が必要です。自社に詳しい人材がいない場合、学習や人材育成、または外部パートナー支援のコストが発生します。初心者にとってAzureの全機能を活用するハードルは決して低くないため、段階的にスキル習得を進める計画が求められます。
| トラブルシューティングの難易度
Azure上で問題が起きた際、ネット検索だけで自己解決するのが難しいケースがあります。Azureに関する情報やコミュニティは増えてきているものの、構成が複雑なクラウド環境では原因切り分けに専門的な知見が必要になることもあります。公式ドキュメントは英語情報も多く、読み解くのに時間がかかることも考えられます。トラブル対応にはマイクロソフトのサポートや経験豊富なパートナー企業の力を借りる場面も出てくるでしょう。
| インターネット依存とネットワーク対策
クラウドサービスであるAzureはインターネット経由で利用するため、社内のネットワーク環境がサービス利用の肝となります。もし社内ネットワークや回線に障害が発生するとAzureのリソースにアクセスできなくなり業務が止まってしまいます。そのため冗長回線の用意や通信障害時の復旧計画など、通信トラブルへの対策も検討が必要です。オンプレミスでは社内LAN内で完結していたシステムでも、クラウド化後はインターネット品質に影響を受ける点に留意しなければなりません。
| ベンダーロックインの懸念
これはAzureに限った話ではありませんが、一度クラウドに移行するとサービスに依存する度合いが高まり、他社クラウドやオンプレミスに戻すのが難しくなる場合があります。Azure独自のサービスを多用したシステムになるほどベンダーロックイン(特定事業者への依存)のリスクは高まります。将来的にマルチクラウド戦略を採る可能性がある場合は、できるだけ標準技術や他クラウドでも代替可能なサービスを選ぶなどの工夫も必要です。(※ロックインについては多くのクラウド全般に当てはまる注意点です。)
以上のようにAzure導入には注意点もありますが、適切に計画・運用すればデメリットは抑制可能です。クラウド利用料金の見積もりやスキル研修、ネットワーク整備など事前準備をしっかり行い、Azureの利点を最大限活かすことが重要と言えます。
| Azure導入の基本ステップ
Azureの導入自体はオンライン上で完結し、比較的容易に開始できます。ここではクラウド初心者向けに、Azure利用開始までの基本的なステップを3つに分けて紹介します。
1, Microsoftアカウントを作成する
Azureを利用するにはまずマイクロソフトのアカウント(Microsoftアカウント)が必要です。既に個人用のOutlookやXboxアカウント等を持っている場合はそれを流用できますが、業務利用なら会社用の新規Microsoftアカウントを用意すると良いでしょう。Microsoft公式サイトでメールアドレス等を登録すれば無料で作成できます。
2, Azureのサブスクリプション(Azureアカウント)を取得する
Microsoftアカウントが準備できたら、Azureの公式サイトにアクセスしてAzure利用の申し込み(サブスクリプション作成)を行います。初めて利用する場合、Azure無料アカウントとして登録することで一定額のクレジット(約2万円分)や一部サービスの12か月無料枠が提供されます。利用目的に応じて適切なプランを選択し、必要事項を入力すればAzureの契約が完了します。
3, Azureポータルにログインしてサービスを利用開始
Azure契約後、管理用のウェブ画面であるAzureポータルにサインインします。Azureポータルでは仮想マシンやデータベースの作成、各種設定をGUI上で操作できます。初めてログインした際は使い方ガイドも表示されるので、案内に従って仮想マシンの作成を試すなどしてみましょう。必要なリソースをデプロイすれば、その瞬間からクラウド上で自社システムの構築・利用を開始できます。なお、不明点があればAzureの公式ドキュメントサイトやマイクロソフトのラーニング教材(Microsoft Learn)も活用しながら進めると良いでしょう。
以上が基本的な導入の流れです。実際の企業導入では、この後にセキュリティポリシーの設定やネットワーク接続(VPN構築)、オンプレミスからのデータ移行といったステップが続きます。ただし、それらは企業ごとに異なるため、まずは上記の手順でAzure環境を立ち上げ、小規模なテスト環境から触れてみることをおすすめします。段階的に経験を積むことで、安全かつ着実にAzure導入を本格展開できるでしょう。
| Azureの代表的な活用事例
Azureは多種多様な業種・用途で活用されています。ここではAzureの代表的な活用シーンをいくつか紹介します。
| 基幹システムのクラウド化
大企業を中心に、従来オンプレミスで稼働していた基幹業務システム(ERPやデータベースなど)をAzure上に移行するケースが増えています。例えばSAPシステムをAzureへ移行し、老朽化したオンプレ環境の課題をクラウドで解決した事例があります。Azureの高い信頼性とスケーラビリティにより、重要な基幹系もクラウドで安定稼働させられる点が評価されています。
| バックアップ・災害復旧(DR)
万一の災害やシステム障害に備えて、Azureをバックアップ先やDRサイトとして活用する企業も多くあります。オンプレミスのデータを定期的にAzure Storageにバックアップしておけば、建物被災やハード故障時にもクラウド上からデータをリストア可能です。またAzure Site Recoveryを使えばオンプレのサーバーを丸ごとAzure上にレプリケーションし、障害時には数分で代替サーバーを立ち上げることもできます。金融機関や製造業など止まることのできないシステムを持つ業界で、BCP対策の一環としてAzureが利用されています。
| リモートワーク環境の実現
コロナ禍以降、Azure Virtual Desktopを活用した仮想デスクトップ環境の導入が進みました。例えばあるIT企業ではAzure上に安全なVDI環境を構築し、在宅社員が社内と同じデスクトップ環境にどこからでもアクセスできるようにしました。Azureならば高セキュリティかつスケーラブルにリモートワーク基盤を展開でき、必要に応じて台数を増減させられるため、一時的な在宅勤務から恒久的なテレワーク体制まで柔軟に対応できます。
| Webサービス・アプリ開発の基盤
スタートアップから大企業まで、WebアプリやモバイルアプリのホスティングにAzureを利用する例も多数あります。Azure App ServiceやAzure Databaseを使って自社サービスのクラウドインフラを短期間で構築し、スピーディにサービス提供を開始できます。実際、ある企業ではAzure PaaSを最大限活用して企業向けCMSサービスを支え、高い可用性を維持しています。自前でサーバーを構築せずに済むため、新規サービス立ち上げ時のスピードと費用面で大きなメリットがあります。
| AI・データ分析への活用
製造業や医療、マーケティング分野などでAzureのAIサービスを業務改善に役立てるケースが出てきています。例えば三菱重工業ではAzure上に社内のノウハウデータを活用するデジタル基盤を構築し、発電プラントの遠隔監視や保全業務の高度化にChatGPT(Azure OpenAIサービス)を取り入れました。また製薬大手の第一三共でも社内DXの一環でAzureのAIサービスを活用し、業務プロセスの変革に取り組んでいます。このようにAzureを使えば、最新の生成AIや機械学習技術を自社システムに組み込み、革新的なソリューションを生み出すことも可能です。
| IoTによるデータ活用
製造業・物流業では、工場設備や車両などのIoTデバイスからデータを収集しクラウドで分析する用途にAzureが選ばれています。例えば自動車メーカーのトヨタは、コネクテッドカーのプラットフォームにAzureを採用し、車両データの収集・分析から自動運転支援サービスの開発までAzure上で行っています。Azure IoT HubやTime Series InsightsといったIoT向けサービスにより、大量のセンサーデータをリアルタイムに蓄積・可視化し、設備の予知保全や物流最適化など新たな価値創出に繋げています。
以上の事例はほんの一部ですが、Azureは業種業界を問わず様々な用途で活用されていることが分かります。オンプレミスでは実現困難だったスピードやスケールでITを活用できる点が評価され、レガシーなシステムをAzureに移行する動き(いわゆる「クラウドリフト」)も加速しています。読者の皆様の業務においても、Azureを活用することでコスト削減や生産性向上、新サービス創出などの可能性が広がるかもしれません。
| 他クラウドとの比較と選定ポイント
クラウドサービスはAzure以外にもAWSやGCPなど複数ありますが、それぞれ特徴が異なります。Azureを導入検討する際は、他クラウドとの違いを理解し、自社に合ったサービスを選定することが重要です。主要クラウドサービス(AWS・Azure・GCP)の特徴を比較すると以下の通りです。
| 主要クラウドサービス(AWS・Azure・GCP)の特徴を比較
| AWS(Amazon Web Services)
Amazon社が提供する最も歴史の長いクラウドサービスで、サービスの豊富さと成熟度でトップクラスです。グローバルで最大シェアを誇り、信頼性・実績共に業界標準的存在と言えます。AWSはスタートアップから大企業まで幅広く利用され、特に急成長中で自社運用からクラウド移行したい企業、あるいはオートスケーリング等で一時的負荷増に対応したいケースに適しています。利用者コミュニティも最大規模で情報も得やすく、初めてのクラウド導入にも選ばれやすい傾向があります。
【参考記事】
| Azure(Microsoft Azure)
Microsoft社のクラウドで、WindowsやOfficeなどの製品との親和性が高いことが最大の特徴です。マイクロソフト製品を日頃使っている企業にとっては、Azure上で同じ技術スタックを活用できるため移行がスムーズです。またオンプレミスとクラウドの両方で運用可能なハイブリッド環境への対応力、充実したセキュリティ機能から、特に大企業での採用が多い傾向があります。市場シェアはAWSに次ぐ2位であり、企業向け機能やサポートの手厚さで評価されています。
| GCP(Google Cloud Platform)
Google社のクラウドで、ビッグデータ処理や機械学習(AI)に強みを持つのが特徴です。Google自身の検索エンジンやYouTube運用で培われた大規模データ処理技術がサービス化されており、BigQueryに代表される高速なデータ分析基盤やTensorFlow等のAIサービスが充実しています。そのため、大量のデータを扱う分析志向の企業や、AI開発を推進する企業に適していると言われます。またGoogle Workspace(旧G Suite)との親和性も高いため、日頃からGoogleのエコシステムを活用している場合は自然に導入できるでしょう。シェアは世界第3位ですが近年伸長しており、特定分野では独自の存在感を放っています。
上記のように各クラウドに強みがありますが、最終的な選定ポイントは自社の状況と目的次第です。
| 選定のポイント
| 現行のシステム環境との相性
既にWindowsサーバーやMicrosoft 365を利用しているならAzureが有力候補です。逆にLinux主体やオープンソース志向が強い場合はAWSやGCPの方が情報資源が豊富なケースもあります。社内で慣れ親しんだ技術スタックに近いクラウドを選ぶと移行のハードルが下がります。
| 実現したいユースケース
例えばビッグデータ解析や機械学習プロジェクトが中心ならGCPが適するかもしれませんし、大規模ECサイトをグローバル展開したいならサービス網羅性で優れるAWSが安定策かもしれません。Azureは汎用性が高く多くのケースに対応できますが、とりわけ社内システム全般のクラウド化やMicrosoft系ソリューションとの統合に強みがあります。自社のクラウド活用目的に照らして最適なサービスを選びましょう。
| コスト構造と契約条件
各クラウドで料金体系や割引プラン(予約インスタンス、コミットメント割引等)が微妙に異なります。利用規模や期間によってトータルコストが変わるため、試算を行い有利な方を選ぶことも重要です。また日本円払いの可否やサポート料金、契約上の裁判管轄(前述の通りAzureは国内法適用)など、企業コンプライアンス上考慮すべき点も比較しましょう。
| サポート体制とコミュニティ
初めてクラウドを扱う場合、サポートの質も重要です。AWSは世界最多ユーザーゆえコミュニティ情報が豊富で困ったとき自己解決しやすい利点がありますqiita.com。Azureは国内MSパートナー企業による導入支援サービスが手厚く、大企業向けのサポートプランも用意されています。自社のIT担当者のスキルレベルや、パートナー支援を受ける前提かどうかによって、合うクラウドを選ぶのも一つの考え方です。
いずれの場合も、「どのクラウドが絶対的に優れている」というよりは自社の要件にマッチするかが選定の決め手になります。場合によっては複数クラウドを使い分ける「マルチクラウド戦略」を採る企業もあります。Azureはその汎用性ゆえ、他クラウドと組み合わせて使われることも多く、既存システムとの親和性が求められる場面でまず選択肢に挙がるサービスです。自社に最適なクラウド利用法を検討する際、Azureが提供する価値と他サービスとの違いを正しく理解しておきましょう。
| まとめ
クラウド初心者や情報システム担当者向けに、Azureの基礎からメリット・活用例まで包括的に解説しました。Azureはマイクロソフトが提供する信頼性の高いクラウドサービスであり、オンプレミスの制約を超えてITインフラを柔軟かつ強力にするプラットフォームです。その圧倒的なサービス群と拡張性、Microsoft製品との連携の良さから、世界中の企業で導入が進んでいます。実際にAzureによってコスト削減や開発スピード向上、DX推進を果たした企業も数多く存在し、その効果は実証済みです。一方でクラウド特有のコスト管理やスキル習得といった課題もありますが、事前に対策を講じることで十分克服可能でしょう。総じて、Azureを正しく理解し活用すれば、自社システムに大きな価値と変革をもたらすことができると言えます。
才コネクトではフリーランス向けのAzure案件も取り扱っております。上流工程~導入まで幅広い案件を扱っておりますのでAzure案件をお探しのITコンサルタントの方はぜひこの機会に登録してみてください。
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