コラム
システム設計とは?よくある案件の特徴や関連案件で成功するコツなどを徹底解説
システム設計とは、システム開発プロジェクトの成否を左右する極めて重要な工程です。なぜなら、システム設計でシステムの全体像や詳細を事前に明確にすることで、開発中の手戻りやミスを大幅に減らせるからです。例えば、設計が不十分なまま開発を開始すると、後から機能の抜け漏れや仕様の誤解が発覚し、追加の修正作業でコストや納期が膨らむことが少なくありません。逆に、適切なシステム設計を行えば、プロジェクトチーム全員が共通認識を持って開発を進められ、高品質なシステムを効率よく構築できます。このように、システム設計を正しく理解し実践することは、ITコンサルタントにとってもプロジェクト成功の鍵となるのです。
目次
| システム設計とは何か(定義と役割)
システム設計とは、システム開発に入る前に、必要な機能や仕様を具体的に決定し、設計書にまとめる工程です。開発の土台となる設計書には、システムが備えるべき機能や画面、データの流れ、外部システムとの連携、セキュリティ要件などが整理されます。
システム設計を行うには、まずシステム化する業務の流れや現状の課題を深く理解することが重要です。現場のユーザーが感じている課題だけでなく、管理者や経営層が抱える要望・問題も洗い出し、それらを解決するために必要な「何を」「どのように」実現するかを描いていきます。こうしてシステムの全体像と目標を定め、関係者間で合意した上で詳細な設計に進むことで、開発のぶれを防ぎます。
例えば、企業の請求業務をシステム化する場合を考えてみましょう。現行の請求処理フローを詳細に把握し、手作業で非効率な部分やエラーが起きやすい箇所を洗い出します。そして、それらの課題を解決するために必要な機能(データ入力の自動化や承認ワークフローの導入など)を定義し、そのための画面・帳票レイアウトやデータ項目を設計します。このように、システム設計では現場の課題に即した具体的な解決策をシステムという形で描き出していくのです。
| システム設計の重要性

システム設計の良し悪しはシステム開発の成否に直結します。設計を十分に行わずに各プログラマの場当たり的な判断に頼ってしまうと、システム全体の品質や一貫性に悪影響が及びやすくなります。業務システム開発は通常チームで行われ、一人で全てを実装することはまずありません。だからこそ、共通認識となる設計図を詳細に描き、メンバー全員が同じゴールに向かえるようにすることが重要です。
また、設計段階での不備や曖昧さを放置すると、開発後期やテスト段階で仕様漏れや不具合となって現れ、大幅な手戻りが発生する恐れがあります。後工程になるほど修正コストは増大するため、上流であるシステム設計に十分な工数を割くことは、結果的にプロジェクト全体の効率と品質を高めることにつながります。
実際に、設計が不十分だったために後戻りが発生したプロジェクト事例は枚挙にいとまがありません。基本設計時に重要な機能の検討漏れがあり、テスト段階でその欠落に気づいて大幅な改修を迫られたケースや、性能設計を怠ったために利用者増加にシステムが耐えられずリリース後に再設計を余儀なくされたケースも現実に起こります。
| システム設計の工程(方針設計・基本設計・詳細設計)
システム開発の設計工程は、いくつかの段階に分かれて順に進められます。要件定義で利用者のニーズとシステム要件を確定した後、一般的には以下のような設計フェーズを経ていきます。
| 方針設計
方針設計では、要件定義で決まったシステム要件を実現するための全体方針を定めます。例えば、どのようなハードウェア構成にするか、使用するソフトウェアやミドルウェア、ネットワークの設計、他システムとの連携方法、採用するアーキテクチャや開発言語などを決定します。また、要求される性能やセキュリティなどの非機能要件もこの段階で考慮し、技術的なリスクを洗い出しておくことが重要です。
| 基本設計
基本設計(外部設計)では、要件定義にもとづきシステムに実装すべき機能や画面などをユーザー目線で具体化します。システム全体の構造や主要な機能の概要、画面レイアウトや帳票の形式、外部システムとのインタフェース仕様など、ユーザーが直接目にする部分の設計を行います。基本設計書を作成してクライアントともレビューを重ね、認識のずれがないよう確認します。こうしてシステムの大まかな仕様を固め、以降の詳細設計に進みます。
| 詳細設計
詳細設計では、基本設計で決定した内容をもとに、プログラミング可能なレベルまで仕様を詳細化します。各機能ごとの処理手順やビジネスロジック、データベースのテーブル構造、オブジェクトクラスの設計、画面遷移、エラーハンドリングなど、システム内部の仕様を細部まで詰めていきます。詳細設計書にはプログラムの構造図やフローチャート、データベース定義書、API仕様書などが含まれ、開発担当者はこれらを参照しながら実装を行います。基本設計とは異なり、詳細設計はユーザーから直接見えない内部向けの工程であるため、この段階でユーザーの承認を得る必要は基本的にありません。
※ プロジェクトによっては、基本設計内で「画面設計」「帳票設計」「データ設計」「機能設計」などの工程に分ける場合もありますが、ここでは代表的な設計工程を説明しました。また、アジャイル開発では設計と実装を並行して進めるケースもあります。しかし、根底にある「要件を整理し最適な構造を考える」というシステム設計の重要性は手法が変わっても同様です。
| 設計の成果物と設計書の種類
システム設計の各フェーズでは成果物として様々な設計書(ドキュメント)が作成されます。これらはシステムの仕様を明確に共有し、後続の工程での指針となる重要な役割を果たします。主な設計関連の成果物には次のようなものがあります。
| 要件定義書
ユーザーの要求や業務上のニーズをシステム要件として整理した文書。システムが満たすべき機能要件や非機能要件を明確にし、開発の出発点となる。
| 方針設計書
システム全体の構成やアーキテクチャを定めた文書。ハードウェアやネットワークの構成図、採用技術や外部インターフェースの仕様など、要件を実現するための基本方針を示す。
| 基本設計書
ユーザー視点でのシステム仕様をまとめた文書。画面レイアウトや操作フロー、出力帳票のフォーマット、機能一覧とその概要、外部システムとの連携仕様などを記載し、ユーザーとの合意形成に用いる。
| 詳細設計書
システム内部の詳細な設計内容をまとめた文書。プログラムの構造やクラス設計、データベース定義、処理手順、エラーハンドリングなどを詳細に記述し、エンジニアが実装する際の指針とする。
| その他の設計書
上記以外にも、プロジェクトに応じて様々な設計書が作成される。例えば、画面ごとの詳細仕様を定める「画面設計書」や、帳票の項目・レイアウトをまとめた「帳票設計書」、データ項目の構造を設計する「データ設計書」、外部連携の仕様を示す「インターフェース仕様書」などがある。
※どの成果物を用意するか、その内容の深さはプロジェクトによって異なります。小規模な案件では基本設計書と詳細設計書を一つにまとめた簡易な仕様書としたり、詳細設計書の代わりにプロトタイプで仕様を補完するケースもあります。プロジェクト規模や開発手法に応じて、必要な設計書を選定し、そのフォーマットと記載内容をあらかじめ定義しておくことが重要です。
| ITコンサルが関わるプロジェクトの種類と特徴
フリーランスITコンサルタントやエンジニアが携われるシステム開発プロジェクトには、いくつかのパターンがあります。それぞれに求められるスキルや得られる経験が異なるため、自身の志向やキャリア目標に合わせた案件選びが重要です。主なプロジェクトの種類と特徴を見てみましょう。
| 大規模企業の自社システム開発
大企業の社内システムや自社サービスの開発プロジェクトです。大規模なユーザーベースや複雑な業務要件を扱うことが多く、最新の技術スタックや高度な開発プロセスに触れられる機会もあります。ただし組織が大きい分、役割分担が細かく、ITコンサルタントとして参画してもプロジェクト全体の意思決定に深く関与するのは難しい場合が多いでしょう。特定のコンポーネントの設計や技術的助言など、限定された領域を担う形で参画するケースも多く見られます。
| 中小企業・スタートアップの開発
スタートアップや中小企業の新規サービス開発プロジェクトです。企画段階から携わることも多く、少人数体制のため幅広い役割を担う必要があります。外部のITコンサルタントであっても重要な機能設計や技術選定に深く関与でき、新しいアイデアの実装などにも挑戦しやすい環境です。ただし、大規模システムの運用経験を積む機会は限られ、開発プロセスが整っていないケースやリソース不足の中での対応が求められることもあります。
| SIer系の大型プロジェクト
SIer(システムインテグレータ)が請け負う官公庁や大企業向けのシステム開発案件です。ウォーターフォール型の進め方が中心で、要件定義や仕様調整など上流工程の経験を積みやすいのが特徴です。また、多様な業界の業務知識を習得できたり、レガシーシステムの刷新・移行や高度なセキュリティ対策など、大規模システム特有の課題に取り組む機会もあります。一方で、新しい技術スタックの採用やアジャイルな開発手法の経験は得にくく、開発者個人の裁量も限定されがちです。ITコンサルタントの場合、プロジェクト内でサブリーダーとして詳細設計や要件定義の補佐を任されるなど、上流工程の一翼を担う役割が期待されることもあります。
なお、プロジェクトの種類によって設計ドキュメントに割く比重も異なります。一般に、スタートアップ系では必要最小限のドキュメントで迅速さを優先する傾向があり、一方でSIer系の案件では詳細な設計書の作成と管理が重視されます。フリーランスとして参画する際も、その文化に合わせ柔軟に対応することが大切です。
| システム設計で成功するコツ・注意点
システム設計を成功させるために、以下のようなポイントに留意すると良いでしょう。
| 設計書の標準化・テンプレート活用
プロジェクト内で設計書の様式や記載ルールを統一することで、ドキュメントの理解や保守を容易にします。あらかじめ標準的なテンプレートや記述例を用意しておくと、担当者ごとのばらつきを防ぎ、抜け漏れのない設計書を効率よく作成できます。
| 仕様変更の管理徹底
開発途中で要件変更が発生した場合、関連する設計書を確実に更新し、影響範囲を洗い出すことが重要です。変更履歴を残し、モジュール間の関係図やCRUD図などを活用して、見落としなく仕様を反映しましょう。小さな変更でも放置すると後工程で大きな不具合に繋がりかねないため、常に最新の設計情報を維持することが成功の鍵です。
| レビューの徹底
各設計工程の区切りごとに、関係者とのレビューを丁寧に行います。特に要件定義や基本設計(外部設計)の段階では、クライアントの要望に合致しているかを発注者と確認し、認識のズレや仕様の漏れを早期に是正することが大切です。開発チーム内でも詳細設計からコーディングに進む前に相互レビューを実施し、疑問点や不安要素を解消してから次工程に進む習慣を付けましょう。
| シンプルで見通しの良い設計
複雑すぎる設計や過度な技術の適用は、かえって開発・保守を難しくします。必要な要件を満たしつつ、できるだけシンプルで一貫性のある設計を心がけましょう。設計をシンプルに保つことで、チーム内で理解を共有しやすくなり、将来的な機能追加や変更にも柔軟に対応できます。
| モデリングツールの活用
モデリング言語や設計支援ツールを用いることで、設計内容を視覚的に表現しやすくなります。クラス図やER図、シーケンス図などを作成すれば、複雑な構造も関係者と共有しやすくなり、認識違いによるミスを減らせます。ただし、ツールの操作に過度な時間を割かれないように注意し、本質的な設計の検討に集中することも重要です。
| 非機能要件の考慮
セキュリティや性能、拡張性などの非機能要件も、システムの品質やユーザー満足度に大きく影響します。機能設計に注力するあまり後回しにされがちですが、設計段階でこれらを明確に定義し、性能試験の計画やセキュリティ設計など必要な対策を盛り込んでおきましょう。
| 実務で活かすための学習方法や資格
システム設計のスキルを高め、実務で活かすためには、日々の学習と経験の積み重ねが欠かせません。ITコンサルタントとして自身の価値を高めるために、次のような学習方法や資格取得を検討すると良いでしょう。
| 実プロジェクトで経験を積む
実践に勝る学習はありません。可能であれば設計フェーズの業務に積極的に関わり、先輩エンジニアの作成した設計書をレビューしたり、自ら小規模なシステム設計を任せてもらうなど、現場で経験を積みましょう。プロジェクト毎に異なる設計手法やドキュメントに触れることで、応用力が身に付きます。また、自分自身で小規模なアプリケーションの設計から実装まで手掛けてみることも、実践的なトレーニングになります。
| 書籍やオンライン教材で学ぶ
体系的な知識を身につけるには、専門書やオンライン講座の活用が効果的です。ソフトウェアアーキテクチャの原則やデザインパターンに関する書籍は、設計の考え方を深めるのに役立ちます。また、実例研究やケーススタディを通じて良い設計・悪い設計の事例を学ぶことで、実践力が向上します。
| 資格取得で体系知識を習得
資格試験への挑戦も、体系だった知識習得に有効です。例えば、国家試験である「基本情報技術者」「応用情報技術者」は開発工程や設計の基礎知識を網羅して学べます。また、「AWS認定ソリューションアーキテクト」などクラウド時代に即した資格取得も、実践的な設計スキルのアピールに役立つでしょう。さらに、自身の専門分野に合わせて「データベーススペシャリスト」や「ネットワークスペシャリスト」などの高度IT資格に挑戦し、特定領域の設計知識を深めるのも良い方法です。
| コミュニティでの情報交換
設計に関する知見を広げるには、エンジニアコミュニティへの参加も有効です。勉強会やオンラインのフォーラムで他のエンジニアと交流し、最新のトレンドやベストプラクティスを学ぶことで、自身の設計スキルを高められます。例えば、SNS上のエンジニアグループに参加したり、設計に関する勉強会に足を運んでみるのも良いでしょう。
| まとめ
いかがだったでしょうか?
システム設計とは、単に開発前の形式的な作業ではなく、システム開発全体の成否を握る重要なプロセスです。本記事では、システム設計の定義から工程、成果物、フリーランスが関われるプロジェクトの種類や成功のポイント、さらには学習方法や資格まで解説しました。システム設計の知識と経験は、フリーランスにとって大きな武器となります。的確な設計によってクライアントの課題を解決できれば、その信頼は次のビジネス機会にも繋がるでしょう。確かな設計スキルを身につけることで、フリーランスITコンサルタントとしてクライアントにより大きな価値を提供できるはずです。システム設計の知識と経験を磨き続け、質の高いシステムを提供し続けていきましょう。
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