コラム
M&Aコンサルタントとは?初心者向けに定義から将来性まで解説
M&Aコンサルタントは、企業の合併や買収(M&A)を専門にサポートするプロフェッショナルです。企業の命運を左右するM&Aの場面で活躍し、その専門知識と経験によってクライアント企業を成功へ導きます。
近年、日本では事業承継問題が深刻化し、多くの中小企業で後継者不在が課題となっています。その解決策としてM&Aが注目され、M&Aを仲介・助言するコンサルタントの需要はますます高まっています。
高度な専門性を発揮して企業の成長戦略を支えるM&Aコンサルタントは、高収入かつやりがいの大きい職業としても知られています。
実際、経済産業省のデータによれば2025年までに70歳を超える経営者は約245万人に達し、その半数以上が後継者不在と報告されています。この「後継者問題」に対処する手段としてM&Aによる事業譲渡が重要視されており、豊富な経験とスキルを持つM&Aコンサルタントが企業間の橋渡し役として求められています。
本記事では、M&Aコンサルタントとは何かという基本から、具体的な仕事内容、必要なスキルや資格・適性、年収・待遇、なる方法やキャリアパス、さらにフリーランスとして独立する働き方や将来性に至るまで、わかりやすく徹底解説します。M&A業界への理解を深め、今後のキャリア形成にぜひお役立てください。
目次
M&Aコンサルタントとは何か?フリーランスと会社員の違い

企業買収の裏側を支えるプロフェッショナル
M&Aコンサルタントとは、企業の合併や買収(M&A)のプロセス全般において専門知識を活かし、戦略立案から交渉支援、契約締結までをサポートするプロフェッショナルです。彼らは経営者の陰で、財務分析や企業価値の評価、買収戦略のアドバイス、相手先との条件交渉、法務・契約の調整など多岐にわたる役割を担い、円滑にM&Aを成立させる立役者なのです。
フリーランスM&Aコンサルタントは、その名の通り企業組織に属さず独立して活動するコンサルタントを指します。組織に属する場合と比べて、自ら案件を開拓し、契約ベースでプロジェクトに参画するのが特徴です。クライアント(買い手企業や売り手企業)から直接報酬を得る形態であるため、成功報酬がそのまま自分の収入となるので、案件次第では大きく稼ぐこともできます。
フリーランスM&Aコンサルタントの働き方と特徴

では、会社員としてのM&Aコンサルタントとフリーランスでは具体的に何が異なるのでしょうか。
まず雇用形態の違いから、働き方や収入構造に大きな差があります。
会社員の場合、M&A仲介会社や投資銀行などに所属し、固定給やボーナスを受け取りつつチームで案件を進めます。案件獲得は会社の看板や組織的な営業に支えられ、成功すれば会社に大きな収益が入り、個人にもボーナス等で還元される仕組みです。
一方フリーランスでは完全歩合に近い形で、案件を自力で見つけて契約し、得られた成功報酬がダイレクトに自身の売上となります。
また、働き方の自由度も違います。
フリーランスは案件やクライアントを自分で選択でき、働く時間や場所も比較的自由です。
例えば複数の案件を掛け持ちしたり、週の一部だけコミットする契約形態も可能で、実力次第では副業的にM&Aアドバイザーを務めることもできます。会社員コンサルタントが朝から晩まで会社のプロジェクトに従事するのに対し、フリーならではの柔軟なワークスタイルが実現できます。
ただしその反面、安定性の違いも無視できません。組織に属する場合は給与が毎月支給され福利厚生もありますが、独立すれば収入は案件の成功有無に左右され、仕事が途切れれば無収入となるリスクもあります。
こうした違いから、フリーランスという働き方は高収入の可能性と自己責任の表裏一体であると言えるでしょう。
フリーランスM&Aコンサルタントの仕事内容と関わるフェーズ

M&Aコンサルタントの主な仕事内容は、一言で言えば買い手企業と売り手企業をつなぎ、M&Aを成功に導くことです。具体的には以下のようなプロセスに関わります。
案件発掘・マッチング:
売りに出ている企業や買収ニーズのある企業をリサーチし、条件に合いそうな買い手と売り手を探して引き合わせます。特に中小企業のM&Aでは、事業承継に悩むオーナー社長と成長戦略として買収を検討する企業をマッチングさせる役割が重要です。
企業評価・提案:
クライアント企業の財務状況や事業内容を分析し、適正な企業価値(株価・買収額)を算定します。その上で相手側に提示するストラクチャー(提案条件)を立案し、買収・売却のメリットを整理して提案します。
交渉支援:
買い手側と売り手側の条件交渉を仲介します。価格条件や従業員の処遇などについて双方の間に立って調整します。交渉が難航した際には解決策を提示して合意点を探り、契約締結に至るまで伴走します。
デューデリジェンス対応:
買い手による詳細調査(デューデリジェンス)の段階では、売り手企業の提供資料の取りまとめや質問対応をサポートします。必要に応じて会計士・税理士・弁護士などと連携し、問題点の洗い出しに対応します。
フリーランスであっても基本的な役割は同じで、案件の最初から最後まで一貫して関与するケースが多いでしょう。
フリーランスが関わるフェーズと案件の種類
すべての案件にフルコミットするとは限りません。
案件やクライアントのニーズによっては、特定のフェーズだけ支援する契約もあります。
たとえば、買い手候補のリストアップなど初期段階のみを請け負ったり、逆に契約交渉の詰めの段階だけ参加するといった形も可能です。フリーランスであれば契約範囲を柔軟に決められるため、自分の得意分野にフォーカスして価値を提供することもできます。
扱う案件は中小企業の事業承継案件やベンチャー企業のM&Aなどミッドマーケットが中心になる傾向があります。大企業同士の数百億円規模の大型M&Aは、投資銀行や大手仲介会社がチーム体制で進めることが多く、個人で受けるのは現実的ではありません。そのため、フリーランスコンサルタントの多くは数億円〜数十億円規模の譲渡案件や、オーナー企業の引退に伴う事業売却案件などを主戦場としています。また、業界特化型で活躍するコンサルタントもいます。
例えばIT業界出身者がIT企業のM&A仲介を専門にしたり、医療業界に詳しい人がクリニックの譲渡案件を手掛けたりと、自身の経歴を活かしたニッチ領域の案件に強みを持つケースもあります。
このようにフリーランスM&Aコンサルタントは自らのスキルセットとネットワークに応じて関わるフェーズや案件の種類を選択できます。自分の得意分野で勝負しやすい一方、案件規模が限定される傾向もありますが、そこで実績を積み信頼を得れば、さらに大きな案件にも繋がるでしょう。
フリーランスM&Aコンサルタントに求められるスキル・資格と適性

活躍するには“3つの武器”が必要
フリーランスM&Aコンサルタントとして活躍するには、3つの武器が欠かせないと言われます。
それは「専門知識」「交渉力」「ビジネスネットワーク」の3つです。
専門知識(ハードスキル)
財務・会計の知識や企業価値評価スキル、契約に関わる法律知識などの専門知見は必須です。
交渉力・コミュニケーション力(ソフトスキル)
M&Aプロジェクトでは多様な利害関係者との調整が不可避です。相手の真意を汲み取り粘り強く合意点を探る交渉力、専門用語をわかりやすく説明できるコミュニケーション力が重要な武器となります。特に人間関係に基づく信頼が成果を左右する場面も多く、対人スキルなくして成功することは難しいでしょう。
営業力・ビジネスネットワーク
フリーランスである以上、自ら案件を獲得する営業力も武器になります。過去の人脈や業界ネットワークを活用し、売り手・買い手の情報を集めたり紹介を受けたりする行動力が求められます。「良い案件を持っている」「信頼できるアドバイザーだ」と認知される個人ブランドを築けば、継続的に声がかかるようになります。
以上の3つは、それぞれが独立したスキルではありますが、総合的にバランス良く備えていることが大切です。専門知識だけあっても案件を取れなければ始まりませんし、営業力があっても肝心の実力が伴わなければ信用を失います。フリーランスM&Aコンサルタントは自分自身が会社のようなものです。多方面の能力を磨き、総合力で勝負する必要があるでしょう。
これがあると強い!役立つ資格や経歴
上記の武器を磨く上で、保有していると有利な資格やキャリアがあります。
必須ではありませんが、以下のようなバックグラウンドはフリーのM&Aコンサルとして信頼を得る強みになります。
公認会計士(CPA)資格:
財務デューデリジェンスや企業評価に関する専門知識を持つ証であり、財務アドバイザリーとして高い信頼を得やすくなります。実際に会計士出身でM&Aアドバイザーに転身する人も多く、数字に強いコンサルタントは重宝されます。
弁護士資格:
M&A契約書の作成や法的リスクの評価に関与できる弁護士資格は強力です。法務面のリードを取れる存在は貴重で、小規模案件であれば契約実務まで一人で対応できるケースもあります。
金融機関・M&A業界での実務経験:
銀行の融資担当や証券会社・ファンドでの投資業務経験、または大手M&A仲介会社で多数の案件を手掛けた実績は大きな武器となります。実務経験は何よりの説得力であり、クライアント企業からも安心感を持って迎えられるでしょう。
これらは一例ですが、要は財務・法務の専門知識や実際のM&A成功経験があることが強みになると言えます。もちろん資格がなくとも実務で鍛えたスキルで勝負できますが、肩書きや経歴は営業面で武器になります。強みとなる資格や経験がある場合は存分にアピールし、無い場合でも独学や研修で不足を補う努力が必要です。
フリーランスM&Aコンサルタントの収入はどれくらい?報酬形態と年収相場

報酬相場と仕事の取り方のリアル
独立を考える上で気になるのが収入(年収)面です。フリーランスM&Aコンサルタントの報酬は、案件規模や関与の仕方によって大きく変動します。一般に、M&A仲介の成功報酬は成約した取引額の数%という形で設定されることが多く、億単位の案件なら数百万円以上の成功報酬が得られることも珍しくありません。
例えば、取引額1億円の案件で5%なら約500万円、10億円なら約5,000万円といった具合です。
ただし成約に至らなければ報酬ゼロのため、複数案件を並行して進めるなどリスク管理も必要です。
一方で、月額固定のコンサル契約として業務委託でプロジェクトに参画し、毎月フィーを得つつ成功時にボーナスを受け取る形態もあります。フルタイム稼働なら月額80万〜150万円程度が相場で、実績次第では200万円超えもあります。稼働率50%程度の契約なら報酬もその半分程度となり、副業として他案件と並行する働き方も可能です。
仕事の取り方については、独立当初は特に工夫が必要です。独立当初は、案件マッチングプラットフォームやフリーコンサルエージェントを活用して案件を探すのも有効です。また税理士・会計士など専門家ネットワークや、前職の同僚などから紹介を受けるなど、人脈を最大限活用しましょう。人脈と信用こそが案件獲得の生命線です。
フリーランスのその先にあるキャリアの広がり
フリーランスM&Aコンサルタントとして成功を収めた先には、さらにキャリアの可能性が広がります。
例えば、実績が蓄えれば志を同じくする仲間と独立系のM&Aファームを立ち上げることも可能です。その場合、自ら代表パートナーとしてチームでより大きな案件に挑めるでしょう。
また、経験を買われて企業のM&A責任者に迎えられたり、自らファンドを立ち上げて投資家・アドバイザー側に回るケースもあります。
このようにフリーランスM&Aコンサルタントの経験は、次のキャリアへの飛躍台にもなり得ます。様々な企業と関わることで視野とネットワークが広がり、今後の選択肢が増えるでしょう。大切なのは日々の案件で成果を出し、信頼と実績を積み上げることです。その先に自分次第で多彩な未来が描ける点もこの道の魅力と言えます。
フリーランスM&Aコンサルタントの案件獲得・ブランディング方法

案件を取るにはどうする?営業・信頼・ブランディング
案件を継続的に取るには、営業力・信頼構築・ブランディングの3つがポイントです。待っているだけでは仕事は来ないため、潜在的な売り手・買い手に働きかけるなど積極的に営業する姿勢が欠かせません。
また、一件一件で誠実に成果を出し、クライアントや紹介者との信頼関係を築くことも重要です。さらに、自分の得意領域や強みを明確に打ち出して個人ブランドを確立すれば、案件の声がかかりやすくなります。
失敗しないために知っておくべき注意点
最後に、フリーランスM&Aコンサルタントとして独立する際に陥りがちな落とし穴と、その回避策について触れておきます。
収入の不安定さへの備え:
前述の通り、案件が途切れれば収入ゼロになるのがフリーランスの厳しさです。独立直後は案件獲得が不安定になりがちです。半年〜1年は無収入でも活動できる資金を用意する、最初は副業として小さな案件から始めて軌道に乗せるなど、戦略的にリスクに備えましょう。一つの大型案件に依存せず常に次の候補を動かすなど、収入源の分散も必要です。
経験・スキル不足のまま飛び込まない:
M&Aは専門性の高い領域です。十分な経験や知識がないまま独立してしまうと、適切な助言ができずクライアントに損害を与えるリスクもあります。独立前に業界で実績を積み、成功体験と失敗からの学びを蓄えておくことが大切です。経験が浅いうちは、先輩フリーコンサルタントとチームを組んだり、得意分野だけ部分的に請け負うなどして徐々に守備範囲を広げると良いでしょう。
法規制やコンプライアンスの順守:
M&A仲介業自体には明確な国家資格こそありませんが、扱う情報は株価に直結する機密情報です。特に上場企業案件ではインサイダー情報の取り扱いに細心の注意を払い、秘密保持契約を結ぶなど法令順守を徹底しましょう。コンプライアンス違反は信用を一瞬で失いかねません。企業に属さない立場でも決して気を抜かないことです。
以上を念頭に置いて慎重かつ積極的に動けば、失敗を避けつつフリーランスM&Aコンサルタントとしてのキャリアを軌道に乗せやすくなります。独立には勇気が要りますが、事前にリスクと対策を把握し準備しておけば成功の確率を高められるでしょう。
まとめ
M&Aコンサルタントは企業買収・合併の最前線を支えるエキスパートであり、その活躍の場はますます広がっています。中でもフリーランスとして独立する道は、経験と実力を備えた人にとって高収入と自由な働き方を両立できる魅力的な選択肢です。もちろん、自由の裏には全て自分で責任を負うリスクや不安定さも伴います。しかし、必要なスキルを磨き、信頼と実績を積み重ねていけば、自分の力で道を切り拓く醍醐味を味わうことができるでしょう。
安定した会社員の道か、挑戦的なフリーランスの道か──選択に迷うかもしれませんが、本記事で解説した仕事内容やスキル、収入のリアルや成功のポイントを踏まえて、自分に合ったキャリアを考えてみてください。事業承継や業界再編のニーズが高まるこれからの時代、M&Aコンサルタントの役割はさらに重要になります。経験と情熱を持つプロフェッショナルにとって、フリーランスという働き方は大きな飛躍のチャンスとなるはずです。