コラム
SAPとは?ERPの基本からメリット・デメリット、SAP S/4HANAや2027年問題まで解説
SAPは企業の基幹業務を統合管理するための世界的に利用されているERPシステムであり、その知識を持つITコンサルタントは市場で極めて高い需要と価値を持ちます。SAPを導入すれば財務や販売、生産などあらゆる業務データを一元管理でき、業務効率化と経営判断の高速化に大きく貢献するからです。また、2027年問題に象徴されるように最新製品SAP S/4HANAへの移行需要が高まっており、SAPに精通した人材へのニーズが急速に拡大しています。例えば、大手製造業が老朽化した基幹システムをSAP S/4HANAに刷新するプロジェクトでは、要件定義からデータ移行・各モジュール設定まで多岐にわたる専門知識が必要です。こうしたプロジェクトにフリーランスのSAPコンサルタントが参画すれば、企業は業務プロセスの最適化とDXを実現でき、コンサルタント自身も高報酬を得るチャンスとなります。要するに、「SAPとは何か」を正しく理解し、そのメリットやプロジェクトの進め方を知ることは、フリーランスITコンサルタントが自身の市場価値を高める上で欠かせない鍵と言えるでしょう。
目次
| SAPの定義・由来・読み方
まずSAPという言葉の基本的な定義とその由来について解説します。SAPとは、もともと1972年にドイツで創業されたソフトウェア企業「SAP社」の名称です。創業者は元IBM社員の5人で、小さな挑戦から始まった会社が現在では世界最大級の業務ソフト企業へと成長しました。社名の「SAP」とは当初の正式名称である「System Analysis Program Development」(独語では「Systemanalyse und Programmentwicklung」)の頭文字を取ったもので、この社名がそのまま同社製品の呼称にも使われています。 SAPの読み方にも注意が必要です。アルファベット3文字の略称であるSAPは、日本では「エス・エー・ピー」と一文字ずつ発音するのが正式です。「サップ」と読む人もいますが、それは誤りなので業界で通用する正しい読み方を覚えておきましょう。 SAP社は当初「System Analysis Program Development」という社名でしたが、後に頭字語であるSAPに変更されています。この企業名はそのまま同社が提供する基幹業務ソフトウェアの呼称としても使われており、一般的に「SAP」と言えばSAP社のERPパッケージ製品を指す場合が多くなっています。
| ERPとは何か?SAPとの関係
SAPを理解するにはERPという概念を避けて通れません。
ERP(Enterprise Resource Planning)とは、日本語では「企業資源計画」などと訳され、企業のヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源を統合的に管理し有効活用する考え方、またはそのための統合型システムを指します。簡単に言えば、「全部門共通の基幹システム」のことです。
従来、ERPが登場する以前の企業では、部署ごとに独立したシステム(会計システム・人事給与システム・在庫管理システムなど)をそれぞれ導入して業務を行っていました。しかし部門ごとにシステムが分断されているとデータや情報の共有が難しく非効率です。たとえば、営業部門が大口受注を取った際に、製造部門に在庫状況や生産可能数を確認したり、購買部門に原材料の調達状況を問い合わせたりといった調整が都度必要になります。各システムがバラバラだと、この確認作業にメールや電話で時間を取られ、受注から納品までのリードタイムに支障をきたす恐れもありました。 ERPシステムはこうした部門間の情報断絶を解消するために生まれた統合基幹システムです。ERPを導入すると会計・販売・生産・在庫・人事など企業内の全ての主要業務領域のデータが一つのシステム上で一元管理されます。これにより、リアルタイムに各部門の情報を相互参照できるようになり、業務プロセスの効率化やデータにもとづく迅速な意思決定、さらには内部統制(ガバナンス)の強化といった効果が期待できます。
SAPとERPの関係を整理すると、SAP社はERPソフトウェア(統合基幹業務システム)のトップベンダーのひとつです。しばしば「SAP=ERPシステムそのもの」のように語られることもありますがSAPは会社名(および製品名)であり、ERPは考え方・システムの種類を示す用語です。ただしSAP社の主要製品がERPであるため、「SAPを導入する」という場合はイコール「SAP社のERPパッケージを導入する」という意味になります。つまりSAPはERPの一種であり、ERPという概念を具体化した製品の代表格がSAPなのです。
補足すると、ERPは統合型システムというイメージが強いですが、必要な機能領域だけを選択して導入することも可能です。たとえば「会計システムだけSAPを使い、他の部分は自社開発システムのまま」といったケースもあります。ただし各部門単位で個別システムを使うよりも、可能な限り統合されたERPで全社をカバーする方がデータ整合性やリアルタイム性のメリットが大きいため、大企業を中心にSAPのような包括的ERPが広く採用されています。
| SAPの主要モジュールと機能
SAPのERPシステムは、企業の業務領域ごとにいくつもの「モジュール」と呼ばれる機能単位に分かれています。モジュールとは一言で言えば「業務機能のグループ」のことで、会計・販売・在庫・人事といった分野ごとに独立したサブシステムとして構成されています。複数のモジュールを組み合わせることで企業全体の業務プロセスをカバーする統合システムが出来上がります。 SAPには非常に多くのモジュールがありますが、ここでは代表的な主要モジュールとその役割を押さえておきましょう。
| 財務会計モジュール(FI:Financial Accounting)
財務会計に関する機能を提供します。貸借対照表や損益計算書などの財務諸表作成、売掛金・買掛金管理、固定資産管理など社外報告向け会計業務をカバーします。他のモジュール(販売管理や購買管理など)と連携し、取引データから自動で会計仕訳を起こすことで経理処理の効率化・正確化を実現します。企業全体の財務状況を把握し、決算業務を支える中核モジュールです。
| 管理会計モジュール(CO:Controlling)
管理会計(原価計算や予算管理)に関する機能を提供します。製造や購買から連携されたデータを基に製品原価を計算したり、部門別の費用配賦や利益分析を行ったりします。FIが社外向けの財務報告であるのに対し、COは社内向けの採算管理ツールです。COモジュールにより各部門の収益性分析やコスト管理が可能となり、経営改善の判断材料を提供します。
| 販売管理モジュール(SD:Sales and Distribution)
販売(営業)業務を管理する機能です。見積から受注、出荷、請求に至るまでの販売プロセスを一元管理します。受注入力に応じて在庫引当や出荷指示を行い、納品書・請求書の発行までシステム上で完結できます。また返品処理などイレギュラー対応も可能です。SDモジュールで処理された売上や請求の情報はFIモジュールに連携され、会計にも自動反映されます。
| 在庫・購買管理モジュール(MM:Materials Management)
在庫管理や購買調達を担う機能です。部品や商品の発注から納品・検収、在庫の入出庫・棚卸に至るまで、モノの流れを管理します。購買部門が仕入先に発注し、届いた資材を倉庫に入庫登録する一連の流れや、現在どの商品がどのくらい在庫として保管されているか、といった情報をリアルタイムで把握可能です。MMはSD(販売)やPP(生産)とも密接に連携し、販売・生産計画に応じた適切な購買や在庫最適化を支援します。
| 生産計画・管理モジュール(PP:Production Planning & Control)
生産計画と製造管理の機能です。需要予測や受注情報をもとに製品の生産計画を立案し、必要な原材料の所要量を計算します。生産指示に従って実際に製造が行われた結果、どれだけ製品が完成し原材料が消費されたか、生産に要した作業時間はどの程度か、といった製造実績データも管理します。PPモジュールにより、生産の進捗状況や歩留まり、不良品発生などを把握でき、生産効率の分析と改善に役立ちます。
| 人事管理モジュール(HR / HCM:Human Resources / Human Capital Management)
人事・給与・勤怠に関する機能です。社員のマスタ情報、組織構造、勤怠管理、給与計算、社会保険手続きなど人事業務全般をカバーします。大量の従業員データを一元管理し、給与計算結果を会計へ仕訳連携することも可能です。従業員のスキルや配置管理、採用や評価のプロセスを管理する機能も含み、人的資源の最適活用を支援します。
以上が主要なモジュールの例です。
この他にも設備保全管理(PM)や品質管理(QM)、物流管理(LE)、プロジェクト管理(PS)など様々なモジュールがSAPには用意されています。
重要なポイントは、これらモジュールは相互に統合されているため、ある業務イベント(例:受注出荷)が他の業務データ(在庫減少や売上計上)にリアルタイムで反映されるということです。モジュール間のデータ連携によって部門横断的な業務の一貫性と透明性が担保されるのが、SAP ERPシステムの強みと言えます。 各企業は自社の業種や業務範囲に合わせて必要なモジュールを選択・組み合わせて導入します。さらに不足する機能があれば追加開発(ABAPというSAP独自言語でのカスタマイズ)によって補強することも可能です。このようにSAPは標準機能の豊富さとモジュール連携による拡張性で、様々な業種・規模の企業ニーズに対応できる柔軟なERPとなっています。
| SAP導入のメリットとデメリット
| SAP導入のメリット
SAPを導入することで得られる主なメリットには、以下のようなものがあります。
| 経営資源の一元化と“見える化”
SAP ERPによって各部門のデータが一元管理されるため、全社の経営資源を可視化できます。これにより経営陣はリアルタイムな情報に基づいた迅速で的確な意思決定が可能になります。また、数値データによって業務の状況を把握できるため、小さな異変やリスク兆候を早期に発見して対処できます。在庫過多や資金繰りの悪化、人員配置の偏りなどもデータから掴み、問題を未然に防ぐことができます。
| 業務プロセスの効率化と標準化
各部署の情報をERP上で共有できるため、部門間の調整作業が大幅に削減されます。先述のように、営業が受注した際に在庫状況や生産計画を即座にシステム上で確認できれば、いちいち他部署へ問い合わせる手間が省けます。重複入力や紙・Excelでの伝達が減り業務のムダが排除されます。またSAPはベストプラクティスに基づく標準業務プロセスを提供するため、システムを導入することで自社の業務を業界標準・グローバル標準に合わせて最適化・標準化する効果も期待できます。
| 内部統制とガバナンスの強化
統合システムでデータに一貫性が保たれることで、財務報告の信頼性や業務プロセスの透明性が向上します。アクセス権限管理や承認ワークフローもシステム化されるため、不正防止や監査対応も容易になります。IT全体をSAPに集約することは、ITガバナンスおよびセキュリティ強化の面でもメリットがあります。システム標準でログが記録されるため、トレーサビリティ(誰がいつ何をしたか追跡可能)も確保されます。
| グローバル展開への対応
SAPは世界中で利用されているERPであり、多言語・多通貨対応はもちろん各国の商習慣や法規制(税制や会計基準など)にも標準機能で対応しています。そのため、日本企業が海外進出する際にも各拠点でSAPを導入すれば統一プラットフォーム上で業務を管理できます。グローバル企業の共通基盤としてSAPを採用するケースも多く、海外拠点へのロールアウト(展開)も比較的容易です。
以上のように、SAP導入による効果は業務効率アップから経営品質向上、グローバル対応まで多岐にわたります。
| SAP導入のデメリット・課題
一方で、SAPを導入・活用する上での課題やデメリットも存在します。代表的なものを挙げます。
| 導入コスト・運用コストが高い
SAPは高機能で大規模なシステムである分、初期導入費用や維持費用が大きくなりがちです。ライセンス費用に加え、コンサルティング・開発・インフラ等のプロジェクト費用も含めると、中堅・大企業向けの投資額になります。中小企業でもクラウド型SAPや特定機能に絞った導入でコスト抑制は可能ですが、それでも安価な中小向け国産ERPなどと比べると割高です。また導入後も、保守契約費用やシステム運用要員の確保などランニングコストも考慮が必要です。
| システムが複雑で習熟に時間がかかる
SAP ERPは機能範囲が非常に広く、企業内の多様な業務をカバーするため操作や画面も専門的で複雑です。そのため、ユーザーが使いこなせるようになるまでに一定の教育・研修期間を要する点がデメリットです。特に非IT部門の一般社員にとっては、旧来のやり方からSAP操作に慣れるまで負荷がかかります。従業員へのトレーニングや定着支援を怠ると、「宝の持ち腐れ」でせっかくの機能を十分活用できない、といった事態にもなりかねません。
| 自社業務とのフィットギャップ調整が必要
SAPはパッケージゆえに標準業務プロセスに自社を合わせる必要が出てきます。自社の現在の業務とSAP標準機能との間にギャップ(不一致)がある場合、どちらかを歩み寄らせる調整が必要です。標準に業務を合わせられれば良いのですが、どうしても難しい場合はアドオン開発(カスタマイズ)で補うことになります。カスタマイズを増やしすぎると導入期間の延長や不具合リスク増加、将来のアップグレード難度上昇などの問題を招くため、フィット&ギャップ分析を綿密に行い取捨選択する必要があります。この調整作業は専門的で時間もかかるため、プロジェクトの難所となります。
| 導入プロジェクトの大規模・長期化
SAP導入は全社規模の変革プロジェクトとなるため、関係者も多く期間も長期に及ぶ傾向があります。ウォーターフォール型で要件定義~設計~開発~テスト~移行~本番展開という一連の流れを完遂するのに1年以上かかるケースも珍しくありません。プロジェクトマネジメントが難しく、スコープコントロールや進捗管理、人材確保など課題も多岐にわたります。導入決定から実運用の定着までのハードルが高い点は経営者にとって大きな悩みどころです。
このように、コスト面・習熟面・プロジェクト難度といったデメリットがあります。ただし裏を返せば、それらを乗り越えるだけのメリットが大きいからこそ多くの企業がSAP採用に踏み切っているとも言えます。導入に当たっては経営層の強いコミットメントと十分な準備・教育期間の確保、経験豊富なパートナー支援などが成功のポイントとなるでしょう。
| SAP S/4HANAと2027年問題
ここではSAPを取り巻く最新の動向として、「SAP S/4HANA」および「2027年問題」について説明します。
| 次世代ERP「SAP S/4HANA」とは
SAP S/4HANA(エス・フォー・ハナ)は、SAP社が提供する現行世代の最新ERP製品です。従来のSAP ERP(SAP ECCと呼ばれる製品群)の後継として2015年にリリースされました。
名称の「S/4」はSAP第4世代のERPであること、「HANA」はSAP独自のインメモリーデータベース技術HANA上で動作することに由来しています。
SAP S/4HANAの特長は、SAP HANAデータベースによる高速処理とシンプル化された新アーキテクチャにあります。従来はディスクベースのRDBMS上で動いていたSAP ERPが、HANAというメモリ上に全データを保持するDBを採用したことで、リアルタイム分析や大量データ処理の高速化が図られました。またUI(ユーザーインターフェース)もFiori(フィオーリ)という直感的なデザインに刷新され、使い勝手の向上が図られています。
S/4HANAにはオンプレミス版とクラウド版が用意され、企業の方針に応じて選択可能です。クラウド版ではSAPがシステム基盤を管理するため、自社でサーバーを持たなくても利用できます。中小企業でもクラウドERPとしてS/4HANAを導入しやすくなり、昨今では企業規模に関係なくSAPを利用できる環境が整いつつあります。
さらにSAPは近年、コアERPのS/4HANAにとどまらず、周辺ソリューションの充実や他社製品の買収統合によって製品ポートフォリオを拡大しています。たとえば顧客管理分野のCRM製品群は「SAP C/4HANA」(旧SAP CRMから発展)、調達管理クラウドのSAP Aribaや人事クラウドのSAP SuccessFactors、経費精算クラウドのSAP Concurなど、ERP以外の領域にもSAPブランドのソリューションが増えています。2021年にはクラウド移行支援施策「RISE with SAP」を発表し、既存顧客のデジタル変革を包括的に支援するサービス提供も開始しました。
このようにSAP社は常に進化を続けており、S/4HANAを核としたクラウド対応や新サービス展開が最新トレンドとなっています。ERPの枠を超えたトータルな企業ITプラットフォームとして、SAPは発展を続けていると言えるでしょう。
| 「2027年問題」とは何か
2027年問題とは、簡単に言うと「SAPの旧世代ERPのサポート期限切れに関する問題」です。具体的には、現在多くの企業で使われているSAP ERP 6.0(SAP ECC)のメインストリーム保守サポートが2027年に終了することを指します。
SAP社は従来、SAP ERP 6.0(ECC6.0)の標準サポート期限を2025年とアナウンスしていました。このため国内では「2025年問題」として認識されていましたが、その後SAP社がサポート期限を延長し2027年末までメインストリームサポート継続とした経緯があります(さらにオプションで2030年まで延長サポート可能)。この変更により「2025年問題」は「2027年問題」と呼ばれるようになりました。
メインストリームメンテナンス終了とは、その製品に対する新機能追加や通常サポートの提供が終わることを意味します。2027年以降、SAP ERP 6.0を使い続ける場合は以下のような状況になります。
・セキュリティ修正パッチの提供は継続される(セキュリティアップデートは実施される)
・しかし新たな機能改善や追加は一切行われない
・障害が発生して業務が止まった場合でも、標準サポート内では問題解決の保証がない(重要度の高い不具合も基本は自力対応になる)
要するに、2027年以降は旧ERPに対するSAP社からの積極的サポートがなくなるため、大きなリスクを抱えて使い続けることになります。セキュリティパッチが提供されるため即座に脆弱になるわけではありませんが、新機能が出ない以上、現行システムに不満や限界を感じている企業にとっては使い続けるメリットが薄れていきます。またトラブル発生時の支援が手薄になるのも不安材料です。
この2027年問題への対策としてSAPユーザー企業に求められるのが、最新ERPへの移行または刷新です。具体的にはSAP S/4HANAへの移行が事実上の解決策となります(他社ERPへの乗り換えも理論上はありえますが、現実には既存資産を活かせるS/4HANA移行を選択する企業が大半です)。SAP社も「2027年までにS/4HANAへ移行しましょう」というメッセージを強く発信しており、世界的にS/4HANAプロジェクトが加速しています。
この流れはフリーランスITコンサルタントにとって大きなビジネスチャンスでもあります。2027年問題の期限が迫るにつれ、S/4HANAへのアップグレード・移行案件が今後数年間は増え続ける見込みです。特に2023~2026年頃にかけてピークを迎えると予想されており、SAP人材の需要は非常に高まっています。実際「2027年問題対応」と称したコンサルティングサービスやセミナーも多数開催されており、業界全体で移行支援の動きが活発化しています。
以上が最新動向として押さえておきたいポイントです。要約すると、現在SAP業界では旧システムから新システム(S/4HANA)への大転換期を迎えており、それに伴ってプロジェクト需要と技術革新が進んでいる、ということになります。
| フリーランスITコンサルにおけるSAP案件の種類

では、フリーランスのITコンサルタントが関わるSAP案件にはどのような種類があるでしょうか。SAP関連プロジェクトは多岐にわたりますが、代表的なものをいくつか挙げてみます。
| 新規導入プロジェクト(要件定義・設計)
企業が初めてSAPを導入するケースです。要件定義フェーズでは現行業務の分析や課題抽出、SAP標準機能とのフィット&ギャップ分析を行い、システムに実装すべき要件を決定します。フリーランスコンサルタントは業務ヒアリングやビジネスプロセス設計、Fit/Gapの検討リードなど上流工程で活躍します。その後の基本設計・詳細設計でも、各モジュール(財務・販売・在庫・生産など)の担当コンサルタントとして、業務フローをSAP上で実現するための設定方針を策定します。ゼロからSAP環境を構築する新規導入案件はスケールが大きく、複数のコンサルタント・エンジニアがチームを組んで進める長期プロジェクトとなります。
| 既存SAP環境への機能追加・モジュール導入支援
すでにSAPを導入済みの企業で、新たに別のモジュールを追加導入したり、追加開発や機能改善を行うケースです。例えば「今まで財務と販売だけ使っていたが、生産管理モジュール(PP)を新規導入する」といったプロジェクトです。この場合、対象モジュール領域の業務要件定義から設定・テストまでを担当するコンサルタント支援が求められます。既存システムとのインターフェース設計や他モジュールとの連携調整も重要な作業です。また、ユーザー部署への追加機能展開に伴う業務フロー変更支援や研修も含まれます。フリーランスのSAPコンサルタントは特定モジュールの専門知識を活かして導入支援し、スムーズな機能拡張に貢献します。
| SAPシステムのバージョンアップ・移行支援
いわゆる2027年問題対応として、SAP ECCからSAP S/4HANAへの移行プロジェクトが典型です。この種類の案件では、現行システム資産(マスタデータ・トランザクションデータ・アドオンプログラム等)を評価し、S/4HANA環境へどう移行するか計画します。移行要件定義ではデータ移行範囲や変換方法、ダウンタイム戦略などを決め、実際のデータマイグレーション作業やシステムコンバージョンを実施します。フリーランスコンサルタントには、移行プロジェクトのPMOとして計画策定や進捗管理を担ったり、各領域で移行テストをリードしたりする役割が期待されます。また、新旧システムのギャップ検討(S/4HANAで廃止・変更となる機能への対応策検討)も重要なタスクです。S/4HANA移行案件は現在市場で特に需要が高く、高単価が見込まれる種類の一つです。
| ロールアウト・グローバル展開支援
本社などで構築したSAPテンプレートを海外拠点や子会社へ展開するロールアウトプロジェクトもあります。各拠点の業務ローカル要件に合わせた設定変更やユーザートレーニングが中心となります。フリーランスコンサルタントはグローバルロールアウト経験や多言語対応スキルを活かして、現地ユーザーとの調整や展開計画管理を行います。この種の案件では英語力や異文化コミュニケーション能力も求められる傾向にあります。
| 運用保守・業務改善プロジェクト
SAP本稼働後の運用サポートや追加改善も案件化されます。たとえば「決算早期化のためにSAP運用フローを見直す」「ユーザーからの要望でレポートを開発する」など、運用フェーズで継続的に出てくる課題に対処する小規模プロジェクト群です。フリーランスがアドバイザーとして定期訪問し改善提案をしたり、スポットでトラブルシューティング対応を行うケースもあります。安定稼働後もSAPに関するニーズは続くため、長期契約で保守コンサルタントとして携わる働き方もあります。
以上のように、SAP案件の種類は「新規導入(上流から下流)」「機能追加導入」「バージョンアップ移行」「グローバル展開」「運用改善」など多岐にわたります。フリーランスのITコンサルタントとしては、自身の強み(得意な業種・モジュール・工程など)にマッチした案件を選ぶことで力を発揮しやすいでしょう。
| SAPスキルを持つフリーランスの市場価値と収入
最後に、フリーランスがSAPを扱えることの市場価値や収入面への影響について解説します。結論から言えば、SAPの知識・経験を持つエンジニアやコンサルタントはフリーランス市場で非常に高い価値があり、高単価の案件を獲得しやすい状況にあります。
その背景にはいくつかの理由があります。
まず一つは、SAP人材の希少性です。SAPは専門領域が幅広く学習コストも高いため、十分なスキルを備えた即戦力人材は慢性的に不足しています。特に日本国内ではSAPエンジニア・コンサルタントの数が需要に追いついておらず、経験者は引く手あまたです。企業としては正社員で抱えるより必要なときに専門家に頼る方が効率的なため、フリーランスへの発注ニーズが増えています。
次に、案件単価の高さです。SAP案件は企業の基幹システムに関わるためプロジェクト予算が大きく、その分フリーランス報酬も高めに設定されます。経験やポジションにもよりますが、月額100万円を超える契約も珍しくありません。実際の相場感として、SAPコンサルタント歴が数年程度でも月80万〜120万円前後、10年以上のベテランなら月150万〜200万円超といった例もあります。SAP開発系のエンジニアでも、ABAP開発経験者は他ITスキルより高めの単価(例えば月70万〜150万円程度の幅)となる傾向です。
また、前述の2027年問題による案件増加も収入面に追い風です。S/4HANA移行など期限付きの需要に対応すべく各社が人材確保に奔走しており、多少レートが高くても確保したいという状況が生まれています。フリーランスエージェント各社でもSAP案件は「高単価案件」の代表例として挙げられており、募集案件数自体も増加しています。
さらに、SAPスキルを持つことで参画できるプロジェクトの規模・範囲が広がるというメリットもあります。SAP案件経験者はその知見を活かし、他のERPや業務システム導入にも応用できるケースが多いです。つまりSAPを極めることでITコンサルタントとしての専門性と信頼性が向上し、結果的により良い条件の仕事を選べるようになります。
ただし、高収入を得るには相応の努力や自己研鑽も必要です。SAPはバージョンアップや新ソリューションの展開が速いため、常に最新情報をキャッチアップする姿勢が重要です。資格取得(SAP認定コンサルタント資格など)はスキルの裏付けになりますし、英語力があるとグローバル案件でさらに重宝されます。また、単価交渉の場では自身の経験年数だけでなく具体的にどのモジュール・工程で何を達成したかアピールできると有利です。フリーランスは自己をマーケティングする必要があるため、実績の棚卸しと発信も怠らないようにしましょう。
総じて、SAPを扱えるフリーランスは市場価値が高く、今後数年は追い風の状況です。キャリアの観点でも、SAPプロジェクト経験を積むことはコンサルタントとして大きな武器になります。実務を通じて経営や業務の知識も深まりますし、大規模PJで培ったマネジメントスキルは他分野でも活きるでしょう。収入面でも専門スキルに見合った高い報酬が期待できます。もちろん簡単な道ではありませんが、SAPスキルを磨くことはフリーランスITコンサルにとって極めて投資対効果の高い自己研鑽だと言えます。
いかがだったでしょうか?
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