コラム
HubSpotとは?ITコンサルタントが押さえるべき統合型CRMの全体像と導入ポイントを解説!
デジタル時代において、ITコンサルタントがHubSpotを理解していることは不可欠です。現在、企業の営業・マーケティング手法は急速にデジタルシフトしており、CRM(顧客管理)やMA(マーケティング自動化)を活用した効率的な顧客獲得と育成が求められている中で、HubSpotはこれらの機能をオールインワンで提供するプラットフォームであり、世界で25万社以上が導入する実績を誇ります。もしITコンサルタントがHubSpotの知識を持っていれば、クライアント企業に最適なソリューションを提案し、営業・マーケ・CS部門を横断した業務改革をリードできるでしょう。そこで本記事では、「HubSpotとは何か」という基本から、主要な機能、選ばれる理由、典型的な導入プロジェクトパターン、ITコンサルタントの役割、導入時の課題と対処法、さらに最新の生成AIトレンドまでを包括的に解説します。
目次
| HubSpotとは
HubSpot(ハブスポット)とは、マーケティング・営業・カスタマーサービスといった機能を統合提供するクラウド型のCRMプラットフォームです。2006年に米国で創業し、当初はインバウンドマーケティング(役立つコンテンツで見込み客を引き寄せる手法)の提唱者として知られました。現在では単なるマーケティングツールに留まらず、顧客とのあらゆる接点を管理できる「オールインワンCRM」へと進化しています。
このプラットフォームの中心にはHubSpot CRM(顧客関係管理データベース)があり、ここに営業管理やマーケティング自動化、ウェブCMSなど複数の製品群(通称「Hub」)をアドオンする形で構成されています。基本機能は無料から使えるフリーミアムモデルを採用しており、小規模なチームでもリスクなく導入を開始でき、必要に応じて有料プランで機能拡張できます。実際に世界135ヵ国以上で利用されており、その使いやすさと豊富な機能から導入企業数は年々増加しています。
HubSpotは、「1つのプラットフォームでマーケティング、セールス(営業)、カスタマーサービスまで網羅できる統合CRM」です。次章では、HubSpotが提供する具体的な製品群と主要機能について見ていきましょう。
| HubSpotが提供する主要機能
HubSpotは複数の「Hub」と呼ばれる製品モジュールを通じて、企業の顧客関連業務を幅広くカバーします。以下に主要な機能領域を整理します。
| CRM(顧客関係管理)
HubSpot CRMとして提供される中核機能で、顧客や見込み客の情報管理を行います。取引先やコンタクトのデータベース、商談(案件)管理、アクティビティの記録や可視化など、営業支援の土台となる機能です。無料で利用できるにもかかわらず、パイプライン管理やタスク管理、レポート作成など基本的なCRM機能が網羅されており、営業チームは案件の状況を一元把握して効率よくフォローアップできます。
| マーケティング自動化(MA)
HubSpotのMA(マーケティングオートメーション)機能はMarketing Hubとして提供され、見込み客の獲得から育成までを支援します。具体的には、メールマーケティング(一斉メール配信やステップメール)、リードジェネレーション(ランディングページやフォーム作成、SEOツール)、リードナーチャリング(スコアリングによる見込み度合い評価、コンテンツ提供)、ソーシャルメディア連携などが含まれます。マーケティング部門はこれらの機能を活用して効率的に潜在顧客を惹きつけ、育て、有望なリードを営業に引き渡す仕組みを作ることができます。
| 営業支援(SFA)
Sales Hubと呼ばれる営業向け機能群で、営業プロセスの効率化と案件成約率向上を支援します。主な機能には、商談パイプラインの管理(ステージごとの案件進捗の見える化)、メールトラッキング(顧客がメールを開封したか通知)、ミーティングスケジューラー(日程調整リンクで商談予約を自動化)、テンプレート&シーケンス(営業メールの定型文や自動フォロー)、見積・契約管理、通話ログ・録音、さらには営業活動の分析ダッシュボードなどがあります。これらにより営業担当者は顧客フォローを漏れなく実行し、生産性を高めることが可能です。
| カスタマーサービス(CS)
Service Hubとして提供される機能で、既存顧客へのサポートやカスタマーサクセス業務を支援します。具体的には、チケットシステム(問い合わせやクレームの管理)、ライブチャットやチャットボット(ウェブサイト上での顧客対応自動化)、ナレッジベース(FAQやヘルプ記事の蓄積公開)、顧客フィードバック収集(満足度調査NPSなど)といった機能を備えています。これによりサポート担当者は顧客からの問い合せを一元管理し、迅速かつ的確に対応できます。顧客満足度の向上だけでなく、サポートのやり取りをもとにした製品改善や追加提案の機会創出にも役立ちます。
| CMS(コンテンツ管理)
CMS Hubと呼ばれるWebサイト・ブログ構築管理機能です。非エンジニアでも扱いやすいドラッグ&ドロップ編集に対応し、企業サイトやランディングページ、ブログなどをコードを書かずに構築・更新できます。テンプレートやテーマによるデザイン変更、SEO最適化支援(メタデータ編集やサイトマップ自動生成)、パーソナライズコンテンツの配信(訪問者属性に応じた表示切替)なども可能です。CRMとネイティブに統合されているため、サイト訪問者の行動データがそのままHubSpot上のコンタクト履歴に蓄積され、マーケティング施策の効果測定やリード育成に活用できます。
| オペレーション(Ops)
Operations Hubとして提供される機能群で、データの統合管理や業務プロセス自動化、他システム連携を強化します。双方向のデータ同期(他のSaaSとのリアルタイムデータ連携)、高度なワークフロー自動化(カスタムコードアクションで独自ロジック実装やデータクレンジングの自動化)、データ品質管理(重複レコードの検出やデータ整形ツール)などが含まれます。Ops Hubにより、企業は複数ツールに散在するデータをHubSpotに集約しつつ、ビジネスロジックに沿った自動処理を実現できます。これらは特に情報システム部門やデータアナリストに有用で、HubSpotを組織全体のデータハブとして活用することを後押しします。
以上のように、HubSpotは単一のプラットフォーム上でマーケティング(MA)、営業(SFA)、顧客管理(CRM)、カスタマーサービス(CS)、ウェブサイト管理(CMS)、そして業務連携(Ops)までカバーする広範な機能を提供しています。必要な機能だけを組み合わせて使える柔軟性もあるため、企業規模や目的に応じてHubSpotをカスタマイズして導入できるのも特徴です。
| HubSpotが選ばれる理由
数あるCRM・MAツールの中でHubSpotが多くの企業に選ばれている理由として、以下のポイントが挙げられます。
| 直感的で洗練されたUI/UX
HubSpotはユーザーインターフェースが分かりやすく操作性に優れることで定評があります。従来型のCRMにありがちな複雑さを排除し、初めて使う人でも迷わずに顧客情報の閲覧やメール配信設定などが行えます。ITツールに不慣れな営業担当者やマーケ担当者でも受け入れやすく、定着率が高いです。使いやすさは単なる現場社員の利便性向上に留まらず、導入トレーニングにかかる時間短縮や入力ミス削減といった効果で業務効率を高めます。
| 無料プランでスモールスタート
HubSpotは基本的なCRM機能を無料で提供しており、企業は初期投資ゼロで導入を開始できます。見込み客リスト管理やメール送信程度であれば無料枠で十分賄えるため、まずは小規模に試してから本格活用したい企業にとって理想的です。また、有料版もStarter(入門)からProfessional、Enterpriseまで階層化されており、自社の成長フェーズに合わせて段階的に機能追加・拡張が可能です。このフリーミアムモデルにより、「最初は無料でリスクなく試し、効果を実感したら徐々に投資を拡大する」というアプローチが取りやすく、社内稟議も通しやすいというメリットがあります。
| オールインワンの統合プラットフォーム
マーケ・営業・CSが単一のデータベースでつながる統合性は、HubSpot最大の強みです。部署ごとに別々のツールを使う場合に比べて、顧客データの分断や重複が発生せず、常に「単一の顧客ビュー」を共有できます。例えばマーケティングが獲得したリードの情報(閲覧したページやメール反応履歴)がそのまま営業担当にも共有され、営業は有益なインサイトを得た上でアプローチできます。また、顧客が契約後にサポートへ問い合わせた内容も同じプラットフォーム上で確認できるため、部門を超えたシームレスな顧客対応が実現します。ツール間の煩雑な連携作業が不要になり、運用コスト削減や意思決定の迅速化につながる点も評価されています。
| 日本語対応とサポート体制
外資系のクラウドサービスでありながら、HubSpotは日本市場への対応が充実しています。ソフトウェアの画面表示はほぼ完全に日本語化されており、日本企業の商習慣になじむ用語やテンプレートも用意されています。また、東京に日本法人(HubSpot Japan)が設立されており、日本語でのサポートやヘルプデスクを利用できる安心感があります。導入時の不明点問い合わせやトラブル対応を母国語で受けられることは、日本企業が安心してツールを採用する大きな決め手となります。さらに、公式なドキュメント類や学習コンテンツ(HubSpot Academy)も日本語翻訳されており、ユーザー教育の面でもサポートが手厚いです。
| 高い拡張性とエコシステム
HubSpotは自社提供の機能だけでなく、他ツールとの連携やカスタム拡張がしやすい設計になっています。公式のApp Marketplaceには数百種類もの連携アプリが公開されており、SlackやSalesforce、Google広告、Facebook広告、Zoom、Excelなど多数の外部サービスとクリック操作で接続可能です。また、API経由で独自システムとの統合もできるため、自社固有の業務にも対応できます。さらに、HubSpot自体の機能拡張としてカスタムプロパティ(独自項目)の追加やワークフローの自由な設計が可能なため、ノーコード/ローコードである程度のカスタマイズが完結します。要件が高度化した場合でもProfessional以上の上位プランではカスタムコード(JavaScript/Python)をワークフローに組み込むこともでき、他社CRMに劣らない拡張性を発揮します。このように、小規模利用からエンタープライズ的な使い方までスケーラブルに対応できる柔軟性もHubSpotが選ばれる理由です。
以上の理由から、HubSpotは「使いやすく始めやすいのに、成長に合わせて強力にできる」というバランスの取れたプラットフォームと言えます。UIの良さや無料プランによる低リスク導入から、統合効果や拡張性による長期的メリットまで備えているため、特に中小企業やデジタル志向の企業を中心に支持を集めているのです。
| HubSpot導入でよくあるプロジェクトパターン
実際にITコンサルタントが関与するHubSpot導入プロジェクトでは、いくつかの典型的パターンが見られます。ここでは代表的なケースを紹介します。
| パターン1:中小・スタートアップ企業が営業・マーケ・CSを一元化
成長途上の中小企業やSaaSスタートアップでは、部署ごとにバラバラの管理をしているケースが多く、営業はスプレッドシート、マーケはメール配信ツール、CSは問い合わせメールで個別対応などデータが分断されがちです。こうした企業がHubSpotを導入することで、顧客情報を統合データベースで一元管理し、営業・マーケティング・カスタマーサクセス部門が共通プラットフォーム上で連携できるようになります。例えばマーケ部門がHubSpot Marketing Hubで獲得したリードを、Sales Hub上で営業がフォローし、契約後はService HubでCS担当がオンボーディングやサポート情報を管理するといった具合です。小規模組織でも全社横断でCRMを活用する文化を醸成し、部門の壁を越えた顧客体験向上を目指すケースは典型的な導入パターンと言えます。
| パターン2:無料CRMから段階的に本格導入へ移行
まずHubSpot無料版CRMを使ってみて、徐々に有料プランへ拡張する導入アプローチもよくあります。例えば最初は営業チームがコンタクト管理や商談管理にHubSpot CRM無料版を利用し始め、使い勝手の良さからマーケティング部門も関心を持ってMarketing Hub(有料版)の導入を決める、といった流れです。あるいは経営層がデータドリブン経営を進めるためまずCRMを整備し、その後マーケティングオートメーション施策にも範囲を広げるケースもあります。スモールスタートが可能なHubSpotだからこそ、段階的にプロジェクトを拡張していくことができ、ITコンサルタントは各段階で適切なハブやプランを提案・設定する役割を担います。
| パターン3:既存の部分最適ツールからの置き換え
別々のポイントソリューション(例:メール配信システム+営業管理Excel+問い合わせ管理ツール)で対応していた企業が、HubSpotへのリプレースで統合効果を狙うケースも増えています。例えば、これまでマーケティングオートメーションツールと営業用SFAが分断され効果測定が困難だった企業が、HubSpotなら一つにまとめられると再評価して乗り換える、といったシナリオです。ITコンサルタントは現行システムの調査を行い、HubSpotへのデータ移行計画や連携シナリオを描きます。単なるツール置き換えに留まらず、業務フロー自体をHubSpotに最適化して再設計し、ツール統合による業務効率化とコスト削減を実現するのが狙いです。
以上のようなパターンに共通するのは、HubSpot導入が組織横断のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の一環となっている点です。ITコンサルタントはそれぞれの企業の状況に合わせて最適な導入順序や活用範囲を提案し、HubSpotを軸にした業務変革をリードすることが期待されます。
| ITコンサルタントが担う役割
HubSpot導入プロジェクトにおいて、ITコンサルタントには多岐にわたる役割が求められます。専門的な知識を活かしつつ、クライアント企業のビジネス目標を実現するために、以下のような責務を担います。
| 要件整理とソリューションフィットの評価
まず、クライアントの営業・マーケティング・CSの現状業務や課題をヒアリングし、HubSpotで何を実現したいのか要件定義を行います。顧客管理プロセスの改善か、マーケ施策の自動化か、部門間連携の強化か等、プロジェクトのゴールを明確化します。その上で、HubSpotの各ハブがその要件に適合するか評価し、必要なハブ構成やプラン選定をサポートします(例えば「見込み客育成が主目的ならMarketing Hub Proが必要」など判断する)。
| 設定および構成設計
要件に基づき、HubSpot上での具体的な設定項目の設計を行います。CRMのプロパティ項目(属性情報)の定義、パイプライン(営業フェーズ)のカスタマイズ、ユーザー権限設定、タグ付けやライフサイクル定義など、データ構造と基本設定を設計します。またマーケティングメールの配信設定、スコアリングルール、ワークフロー(自動化シナリオ)の詳細設計など、どの機能をどう使えば要件を満たせるかをプランニングします。ITコンサルタントはHubSpotのベストプラクティスを踏まえ、クライアントに最適な設定パラメータを設計していきます。
| 業務フローの再設計
HubSpot導入に合わせて、クライアントの業務プロセス自体を見直し、最適化する提案も行います。例えばリードの発生から営業フォロー、受注、顧客育成に至る一連の流れを整理し、HubSpot上でどのタイミングで自動アクションやアラートを設定するか、部門間ハンドオフをどうスムーズにするかといった業務フローを設計します。またインサイドセールスやマーケ担当者の役割分担も再定義し、HubSpotを用いた新しい営業マーケ連携プロセスをドキュメント化します。ツール導入は単なるシステム変更ではなく業務改革の機会でもあるため、コンサルタントは現行フローの課題を洗い出し、HubSpotの機能を活かした効率的なプロセスへ再構築する役割を担います。
| 外部システムとの連携設計・実装
HubSpotはそれ単体でも完結しますが、現実には他のシステムやデータソースとの連携が必要になる場合が多いです。ITコンサルタントは外部システム連携の計画立案と技術要件の定義も担当します。具体的には、既存の基幹システムやWebサイト、広告プラットフォーム、他のSaaSツール(例:基幹ERP、顧客問い合わせシステム、イベント管理ツール等)とHubSpotをAPIやデータインポート/エクスポートで統合する設計を行います。必要に応じて、開発者と協力してカスタム連携の実装プロジェクトを管理します。例えばWebサイトの問い合わせフォームからHubSpotに自動でリード登録し通知する、受注情報をERPからHubSpotに同期してマーケ施策に活用する、といったデータ連携やシステム間のワークフローを構築します。これによりHubSpotが社内システム群のハブ(中核)となり、一貫したデータ活用基盤が出来上がります。
| 定着化支援・運用サポート
システム導入は始まりに過ぎず、社内に定着させて価値を発揮させることが肝心です。ITコンサルタントは導入後も、ユーザー研修の実施や利用状況のモニタリング、定期的な改善提案を通じて、HubSpot活用が社内で根付くよう支援します。具体的には、営業・マーケ各チームへの操作トレーニングや、HubSpot活用ガイド(マニュアル)の作成支援、利用ルールの整備などを行います。また導入直後に発生しがちな「どう設定すればよいか分からない」「想定通りの効果が出ない」といった相談に応じ、問題解決や設定変更のサポートも提供します。さらに、KPIダッシュボードの定期チェックや、運用レポートの分析を手伝い、クライアントがHubSpotから得られる成果を最大化できるよう伴走します。要するに、コンサルタントはHubSpot導入プロジェクトの成功とその後の持続的な運用定着まで責任を持ってサポートする役割を果たすのです。
以上のように、ITコンサルタントはHubSpot導入におけるビジネスと技術の架け橋として、多面的な貢献をします。単なる設定代行者ではなく、クライアントの成長戦略を理解した上で、HubSpotというツールを最大限に活かすためのプランナー兼プロジェクトマネージャーとして立ち回ることが求められます。
| HubSpot導入・活用における課題と対処法
便利なHubSpotとはいえ、導入・活用の過程でいくつか共通の課題(つまずきやすいポイント)が見られます。ここでは代表的な課題と、その解決策について解説します。
| 課題①: 社内への定着が難しい(ユーザーが使いこなせない)
HubSpotを導入しても、現場の営業やマーケティング担当者が十分に使いこなせず、結局Excel管理に逆戻りしてしまうケースがあります。新しいシステムへの抵抗感や、初期設定の不備による使いづらさが原因で「宝の持ち腐れ」になるリスクです。
| 対処法
定着化には経営層のコミットメントと現場双方への働きかけが重要です。まず経営陣からHubSpot活用の意義を示し、KPI管理や評価制度に組み込むことで利用を促進する環境作りをします。同時に、現場ユーザー向けには十分なトレーニングを提供し、操作マニュアルや活用事例集を整備して日常業務で迷わないよう支援します。さらに、初期段階では専門コンサルタントが週次ミーティングで使い方の振り返りや質問受付を行い、現場の不満や要望を即座に設定改善に反映させるといった伴走支援も有効です。要は、「使って便利だ」と利用者自身が実感できる成功体験を積み重ねることで、HubSpotを業務に根付かせることができます。
| 課題②: MA施策が属人化し運用が一人に依存
マーケティングオートメーション(MA)の運用において、特定の担当者だけがHubSpotの使い方やメール施策のノウハウを抱え込んでしまい、チーム内で属人化する問題があります。その担当者が休暇・退職すると途端に施策が止まる、他のメンバーはHubSpotを触れない、といったリスクにつながります。
| 対処法
まず組織としてマーケ施策のプロセスを見える化・ドキュメント化することが重要です。HubSpot上で行っているメール配信やワークフローの設計意図、スコアリング基準などを文章化し、チーム全員が参照できるナレッジベースを作ります。また運用権限を分散させ、複数メンバーがHubSpotにログインして簡単な更新・チェックができるよう権限設定や研修を行います。定期的にチーム内レビュー会を開き、現在のMA施策の効果や設定内容を共有して知識の属人化を防ぐことも有効です。場合によっては外部パートナー(代理店やコンサル)と協働し、ノウハウを吸収する形で属人状態から脱却するのも一案です。重要なのは「誰か一人がいなくても回る運用」を目指し、チーム全体でHubSpotを扱える体制を築くことです。
| 課題③: リードスコアリングの精度に対する不信感
HubSpotのマーケティング機能にはリードスコアリング(見込み客の興味度合いを数値化する指標設定)が含まれますが、そのスコア精度を営業現場が信頼できず、有効活用されないという悩みがあります。例えば「スコア80以上を優先フォロー」と決めても、実際にはスコアが高くても受注に至らないリードが多い、逆にスコア低く見逃していたリードが競合に取られた、などの声が出る場合です。スコアリングモデルの初期設定が不適切だったり、ビヘイビア(行動指標)に偏りすぎて質的評価が反映されていないことが原因であるケースがあります。
| 対処法
リードスコアリングは導入後に継続的なチューニングが必要な機能です。まずは営業とマーケティングが定期的にディスカッションし、「受注につながった顧客にはどんな共通点があったか」「スコアに含めるべき重要行動は何か」などフィードバックを反映してスコアルールを見直します。HubSpotには手動ルールだけでなく予測リードスコア(機械学習によるスコアリング)機能もあるため、データ量が十分ならAIに補助させるのも手です。また、スコアだけに頼らずインテントデータ(サイト訪問頻度や特定ページ閲覧など)の共有や、スコア区分に応じたフォローアップ手順の標準化(例えばスコア上位には即電話、中位はメールなど)を決めておくことで、スコアへの不信を軽減し営業活動に活かしやすくなります。要は、スコアリングは一度作って終わりではなく、検証→改善を繰り返して現実とのズレを補正する運用体制を築くことが重要です。
これらの課題以外にも、「高度なカスタマイズ要件に直面した際にどうするか」や「他システムとのデータ整合性」など個別ケースはありますが、総じて言えるのはHubSpot導入効果を最大化するには人とプロセスの側面から継続的に改善を図ることです。ITコンサルタントはこうした課題解決にも深く関与し、必要に応じて追加設定や他ツール活用の提案、人材育成支援を行っていくことになります。
| Hubspotの最新トレンド(AIとの連携)
近年、生成AI(Generative AI)の進化に伴い、HubSpotもAI機能を積極的にプラットフォームに統合し始めています。2023年以降、ChatGPTのような大規模言語モデルを活用した新機能が次々と登場し、マーケティングや営業の生産性向上に寄与しています。ITコンサルタントとしても、これら最新トレンドを把握しておくことで、より先進的な提案が可能になります。主なトピックをいくつか紹介します。
| ChatSpot(チャットスポット)
HubSpotが提供する対話型AIアシスタントです。ChatGPTをベースにしたチャットボットで、HubSpotのCRMデータや外部情報源と連携しながら、ユーザーの自然言語による質問や指示に応答します。例えば「今月の新規リード数を教えて」「○○社向けの営業メール文案を作成して」といった問いかけに対し、ChatSpotがCRM内のデータを集計したレポートを生成したり、提案文を作ったりしてくれます。専門コマンドを覚えなくても会話形式でデータ検索や業務指示ができるため、非技術ユーザーでもAIの力を日常業務に活用可能です。現在はベータ版ですが、将来的にHubSpot内の様々な操作をチャット一つで行えるようになることが期待されています。
| AIによるコンテンツ自動生成
HubSpotのマーケティング向け機能には、ブログ記事やランディングページ、広告文、メール文面などをAIが自動生成・補助してくれるツールが実装されつつあります。例えばコンテンツ編集画面で「AIアシスタント」を起動し、キーワードやトピックを入力すると、AIが下書きのブログ文章を提案してくれる機能があります。またソーシャルメディア投稿のアイデア出しや、SEO向けのメタディスクリプション作成をAIが支援するケースもあります。これらによりマーケティング担当者のコンテンツ制作負荷が軽減され、より戦略的な業務に時間を割けるようになります。ただし、自動生成コンテンツはそのままではニュアンスや文脈が合わないこともあるため、最終的な人による校正・編集は不可欠です。ITコンサルタントはこの点も踏まえ、クライアントにAI活用の効率化メリットと注意点を伝える必要があります。
| 営業支援へのAI活用
営業分野でもHubSpotはAIを活用した支援機能を導入しています。例えば、過去の商談データをもとに受注確度や取引優先度を予測するAIによる案件優先順位付け、営業担当者が記録した訪問メモや通話記録から要点を自動要約する機能、提案内容に応じたカスタマイズメールの自動下書き作成などが挙げられます。これにより営業パーソンは事務作業や分析にかける時間を削減し、より顧客との対話や戦略立案に集中できます。特にChatSpotも営業支援ツールとして、例えば「次にフォローすべきホットリードは?」と尋ねればAIがスコアや最近の行動から候補を挙げる、といった使い方も想定されています。今後、HubSpot上での営業活動はAIの力を借りてよりスマートでパーソナライズされたアプローチへと進化していくでしょう。
| ワークフロー自動構築とAIエージェント
HubSpotの自動化機能(ワークフロー作成)にもAIが導入され始めました。「○○な条件のとき△△な処理をするワークフローを作りたい」とテキストで指示すると、AIがシナリオに沿ったワークフローを自動生成し提案してくれるといった機能です。従来は専門知識が必要だった複雑な自動化も、対話形式で構築できるようになるため、非エンジニアのマーケ担当者でも高度なオートメーションに挑戦しやすくなります。また、HubSpotはBreezeと呼ばれるAIエージェント群を発表しており、コンテンツ作成やSNS投稿、見込み客の発掘など特定分野に特化したAIによる自動実行ツールも登場しています。例えば「ソーシャルメディア用に今週の投稿カレンダーを作成して」と指示すれば、AIエージェントが業界データも参考に最適な投稿案を用意してくれる、といった世界が現実味を帯びています。これら生成AI×自動化の組み合わせは、マーケティング・営業活動の効率を飛躍的に高めるポテンシャルがあり、HubSpotはその最先端を走りつつあります。
このように、HubSpotは時代のトレンドである生成AI技術を積極的に取り込み、ツールの付加価値を高めています。ITコンサルタントとしては、単に現行機能を知っているだけでなく、こうした新機能のアップデートにもアンテナを張っておくことが大切です。クライアントに対して「最新のHubSpotではAIを使ってここまで自動化できます」という提案ができれば、信頼されるパートナーとして一歩先を行くコンサルティングが提供できるでしょう。
| まとめ:Hubspotはマーケティングを統合的に支えるプラットフォーム
本記事で述べたように、HubSpotは現代の営業・マーケティング・CSを支える統合プラットフォームとして、多くの企業に採用されています。ITコンサルタントにとってHubSpotを理解し使いこなせることは、単なる製品知識の習得に留まらず、自身の市場価値向上につながる重要な要素となっています。
HubSpotへの深い理解と提案実践は、ITコンサルタントにとって顧客への価値提供を高める武器であり、自身のキャリア価値をも押し上げるものです。今後も進化し続けるHubSpotをキャッチアップし、クライアントに最適な形で活用できるよう提案していくことで、あなたのコンサルタントとしての評価は確実に向上するでしょう。ぜひ本記事の内容を踏まえ、現場でHubSpotの知見を存分に発揮してみてください。それがクライアント企業の成功につながり、ひいてはITコンサルタントとしてのあなた自身の市場価値向上に直結するはずです。